週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
寝起きで不機嫌─彰
「おい彰、雑煮ができたぞ。起きろよ」
「んん」
朝陽さん……。
起きたいけど、昨日夜更かししたからすげぇ眠い。
だから、もーちょっとだけ寝かせて。
てか、一緒に寝よ。
「あ、さ、ひ、しゃん……」
「っ!」
「好き……んー」
目は開かないけど、朝陽さんの位置ぐらいわかる。
俺は朝陽さんの首に腕を回して引き寄せて、まずはほっぺにキスをした。
ああ、相変わらず朝陽さんのほっぺはぷにぷにだね。
「おいコラ彰! 目を覚ませ!」
「やらぁ。朝陽しゃんと、ね、る、の」
「寝惚けんな、俺は朝陽じゃねぇ! 大翔だ、や、ま、と!」
「やまと。…………はあ!?」
大翔だと!?
微睡んでた俺の脳は、一瞬で覚醒した。
◆ ◆ ◆
最悪だ……。
俺は唇をエタノールの海に浸したい思いで、必死に拭った。
でも、あいにくここは、俺と朝陽さんの愛の巣でも、実家でもない。
朝陽さんも……エタノールも、ここにはない。
だって俺は、年末年始で親兄弟と田舎に帰省中だから。
「おい……」
「なんだ」
「態度が変わりすぎだろ」
「寝起きで機嫌が悪いんじゃね」
「さっきまでやけに甘ったるい声で『朝陽しゃーん』とか言ってたじゃねぇか」
「うるせー! 俺は、俺は……っ」
「唇同士じゃなかったんだから落ち込むなよ……。俺も彰にキスなんかされても嬉しくないけど、そこまで嫌がられたら傷付く」
「大翔がややこしい起こし方するから悪いんだろ!」
「知るかよ……。俺は『雑煮ができたから彰を起こしてこい』って言われて、普通に起こしに来ただけだし」
「揺すり方が朝陽さんっぽかった」
「それこそ知らねーよ……。いいから行くぞ。雑煮食って元気出せ」
立ち上がった大翔に腕を引かれて、俺は渋々動きだした。
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