週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
オマケ 1
「おーっす! ちょうどよかった二人とも」
「………………」
朝陽さんとケーキを買いに行くためにマンションのエントランスを出たら、怪しいサングラス男が話し掛けてきた。
最近不審者が多いから、朝陽さんをちゃんと守らないと。
俺は男と目を合わせないよーにして、口を開こうとする朝陽さんの背中を押した。
「まお」
「朝陽さん、行こっか」
「……?」
「ね、どんなケーキがいー?」
「あ! やっぱイチゴだろ!」
「あはは。朝陽さんは、イチゴが大好きだもんね」
「ん。チョコも捨てがたいけどな」
「イチゴの乗ったチョコクリームがあったら、それにしよっか」
「それいーな!」
「決まりだね」
かわいーな。
クリスマスケーキ買いに行こうって誘ってよかった。
手は繋げないけど、俺たちはラブラブな空気を纏いながら駅前に向かって歩き出した。
「……って、おい! 俺だっての!」
サングラスを取った不審者、もとい大翔が、俺たちの前に回り込んできた。
「あーうぜぇ」
「やっぱ魔王か」
「彰はひでぇな。朝陽おはよう」
「おは。魔王も、昨日は本命とデートだったんだろ?」
「うん。イブにデートしてくれるなんて、脈ありっぽくね?」
「知らねー。告ればいーんじゃね」
「そんな勇気、出ないよ……」
「きめぇ」
「相変わらず手厳しいな、朝陽は」
「で、なにしに来たんだよ大翔。これからケーキ買いに行くんだから帰れよ」
「あっ、そーだった! 予約してねーから早く買いに行くぞ彰」
大翔にシッシッとジェスチャー付きで言ってやると、朝陽さんがケーキに反応して俺を急かす。
俺はそんな朝陽さんに笑顔を向けて、再び駅前に向かって足を……。
「ケーキなら持ってきてやったぞ?」
「ん?」
大翔の呟きに、朝陽さんが足を止めた。
「朝陽さんっ」
「魔王、ホントか?」
「完全予約生産のケーキだぞ。白いクリームの中はチョコレート色のココアスポンジと甘いイチゴ」
「マジかよ! 食いてー!」
「だろ。一緒に食おうと思って持ってきたんだぞー」
「よし、来い魔王。招待してやる」
「喜んで」
「………………」
最悪だ。大翔のせいで朝陽さんとのクリスマスが……。
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