週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
月光に照らされて─朝陽
ファミレスを出たオレたちは、電車で帰る方がめんどくせーってことで、寒いけど散歩しながら帰ることにした。
電車はどーせ混んでるだろーし、マンションまで歩いても一駅半程度らしーし。
それに、人通りがほとんどない裏道を通れば、彰と手を繋いで歩ける。
……オレたちを照らすのは、たまにある街灯と月明かりだけだから。
外で手を繋いで歩けるなら、こーいうのも悪くねーな。
歩き始めて五分。寒さに慣れ始めたオレは、彰の手の温もりにこっそり幸せを噛み締めていた。
そんな中、オレの目に懐かしい物が飛び込んできた。
小さい公園の真ん中にある、ジャングルジムだ。
「彰っ」
「なーに、朝陽さん」
「この公園に寄ろーぜ」
「え。寒くない?」
「軟弱者かお前は。そのガタイは飾りか?」
「いや、朝陽さんが寒くないかなって」
「オレをバカにしてんのか、お前は」
「滅相もございません」
「よし、じゃあ付いてこい!」
「え」
彰の手を放して公園に走ったオレは、そのままの勢いでジャングルジムにのぼる。
ガキの頃、よくこれで遊んだんだよな。
てっぺんで立ったら、世界を制した気分になれんだ。
「あ、朝陽さん……!」
「なんだ。泣きそーな声出すな」
「だってここ、意外に高いしっ」
「これぐらいで怖いのか? 情けねーな」
「うぅ」
「怖いなら下を見るな」
「……うん」
怖いのにのぼってくるなんてバカだな。
降りる時は、オレが下から支えてやらねーと無理か?
ったく、彰はしかたねー奴だ。
オレは震える彰の腕に自分の腕を絡めて、身体をくっつけてやった。
「彰、上見てみろ」
「上?」
「月が近くてキレーだろ?」
「あ……ホントだ」
「こーやって上だけ見てると、なんかオレと彰しかいねーみたいだな」
「うん。高さも気にならなくなってきたかも」
「ん」
かなりいー雰囲気だ。
今なら、自然に言えそーな気がする。
「朝陽さん」
「っん?」
「これ受け取って」
「……オレに?」
「うん。クリスマスプレゼント」
「サンキュ。でも落としたら困るから、ここじゃ開けられねーな」
「ごめん。今、すげー雰囲気いいから渡したくなって……」
「そか」
……やっぱ緊張する。
けど、今日はクリスマスイブだから。
「彰」
「なーに、朝陽さん」
「オレ……今幸せだ。彰を好きになってよかった。これからもずっと、オレと一緒にいてほしー」
ありがたく受け取れ。
今のオレの、精一杯だ。
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