週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
だって好きだから─朝陽
彰が、すげー怖い顔でオレにくっついてる女を睨み付けてる。
無駄にイイ顔だし、背も高いから威圧感が半端ねー。
てかやべーな!
こんな彰、見たことねーんだけど。
「おい……どーいうつもりだ、てめぇ」
これ、女を相手にした台詞なんだぞ?
いつもの情けねー彰は、影も形もねー!
「離れろ。汚ねぇ手で俺の朝陽さんに触るんじゃねーよ」
「ご……ゴメン、なさ……」
女は震えながらオレの腕を解放して、ちょっと横に動いた。
すると彰はすかさず動いて、オレを自らの背後に隠すよーに立つ。
オレは野獣に襲われた姫かって感じの扱いだ。
てか……すげー注目されてんだけど。
とりあえずここから離れたくて、オレは未だに女を睨み付ける彰の袖を引いた。
「彰っ、もー行くぞ」
「え、あ、朝陽さん待って!」
一人で踵を返して駅に入ると、慌てて彰が追いかけてくる。
ったく……助けてくれたのは嬉しーけど、男が女から男を助けて庇うって、かなり目立ってたぞ。
しかもここはバイト先の最寄り駅なのに。
「朝陽さーん!」
「うるせー。とにかく電車に乗るぞ」
さっきのかっけー彰はどこだって詰め寄りたくなるぐらい、情けねー顔の彰がオレに追い付いた。
そこで、ちょうど入ってきた電車に乗り込む。
つり革に掴まって落ち着いたら、彰が耳元で囁いてきた。
「朝陽さん、大丈夫? 変なことされなかった?」
「あ……うん。腕に抱き付かれただけだ」
「よかった……。朝陽さんが襲われてるのを見た時、マジで血の気が引いたよ」
「大袈裟だろ。逆ナンされただけだ」
「大袈裟じゃないよ! もう、朝陽さんは無自覚だよね」
「オレは男だぞ。心配しすぎだ」
「当たり前だよ! だって、朝陽さんのこと好きだから……」
「っ、バッカお前、こんなとこで言うな!」
オレは彰の硬い腹筋を、力一杯殴ってやった。
厚着してるから、別にいーんだ!
苦しそーに呻いてる彰は、無視だ!
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