週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
早く来ないかな─朝陽
今日はクリスマスイブ。
今年のイブは土曜日だから、街はカップルだらけだ。
オレの周りでも、次々に待ち合わせたカップルが合流して仲良く消えてく。
それをちょっと寂しー気持ちで眺めながら、オレは駅前の時計を見上げた。
もーすぐ八時、約束の時間になる。
彰の奴、早く来ねーかな……。
実は今日、彰がバイトだからバイト先の最寄り駅で待ち合わせしてんだ。
今からだったらテキトーにご飯食うぐらいしかできねーけど、これでも立派なデートだろ。
捻挫で休みまくったせいでイブにシフト入れられた彰が絶望してたから、オレから提案してやったんだ。
ちなみにオレは、彰の代わりにいっぱい入ったからって強制的に休み。
ホントは彰と一緒にバイトしたかったんだけど、却下された。
ま、彰とオレが付き合ってるなんて誰も知らねーし、しかたねーな。
そー思いながら一つあくびをしたら、オレの目の前で知らねー女が立ち止まった。
「ねー、おにーさん一人?」
「?」
「おにーさーん。おーい」
ここにいる奴は大抵待ち合わせなのに、ナンパみてーな物言いだ。
しかも、どー見てもオレを見て言ってる。
「オレか?」
「うん。いきなり話し掛けてゴメンね!」
「いや……別にいーけど」
「そっか! 優しーね」
女は嬉しそーに笑った。
こいつは、自分の笑顔がかわいーと思ってるタイプだな。
オレ、大学に女のダチが結構いるから、そーいうのわかるんだよな。
「で! 暇? 暇ならあたしと遊ぼ。あたしも一人でブラブラしてたんだー。クリスマスイブなのに!」
「オレは今、待ち合わせしてるから無理だ」
「えー! カノジョと?」
「ん……と」
肯定して追い払いてーけど、これから彰が来るから無理だ。
だからってダチって言ったら最悪、『あたしも混ぜて』とか言いそーだし……。
「ねーねー、あたしと遊んでよ!」
女は返事をしねーオレの腕に、自分の腕を絡ませてきた。
あーめんどくせーな。
オレはごまかすよーに辺りを見渡す。
バイト仲間の女でも通ったら助けてもらおーと思って。
でも、そんなオレの目が一番に捉えた知り合いは……。
「朝陽さーん!」
すげー勢いで走ってくる彰だった。
彰は完治した左足で元気に地面を蹴って、あっと言う間にオレの前に来た。
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