週刊『彰と朝陽』

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いい匂い─朝陽



 バイト帰り。

 オレはスーパーに寄って、テキトーに安売りの野菜とか肉を買ってからマンションに帰ってきた。

 作るのはオレだけど、どれを使って何を作るかは彰が考えてくれるから楽だ。

 てか年末って、なんでこんなに忙しーんだろーな。

 別に時間延長とかしたわけじゃねーのに、バイトが終わったら、もークタクタだ。

 ……早く彰に会いてー。

 エレベーターを降りたオレは、家まで走ってドアを開けた。


「っん……?」


 何故か、いー匂いがする。

 食べ物の、ご飯の匂い。

 ……まさか彰の奴!

 オレは靴を脱ぎ捨てて、摺り足で廊下を走った。


「彰ッ」

「うわっ!」

「あれ……?」


 料理中のとこに奇襲かけて説教してやろーと思ったのに、彰の声はドアを開けてすぐにキッチンに走ろーとしたオレの背後、リビングの方から聞こえた。


「ビックリした。朝陽さん、おかえり」

「ん。ただいま」

「ほら見て」

「こたつ!」

「そーだよ。朝陽さんが欲しがってたの」

「すげー! どーしたんだ!?」

「大翔が買ってくれた」

「魔王!?」

「うん。クリスマスプレゼントだって」


 丸い机のこたつだ!

 彰が布団に入ってて、気持ちよさそーにしてる。

 さっそくお礼言わねーと。


「魔王はどこだ?」

「飯作ってる」

「マジか!」


 なんだあいつ、やけに太っ腹だな!

 明日辺り、日本に特大の隕石でも落ちてきそーだ。

 オレはコートを脱いで、さっそくキッチンに行った。

 そーしたら、やたら真剣に肉を焼いてる魔王がいた。


「魔王?」

「……朝陽、おかえり」

「ただいま。なにしてんだ?」

「肉の返し時を見極めてんだ」

「そか。こたつ、サンキュ!」

「嬉しかった?」

「ん。魔王はサンタだな!」

「魔王サンタか、なんかメルヘンチックでいいな。魔王と言えば普通サタンだけど」

「魔王は、いー魔王だからな」

「じゃあ朝陽くん。いい魔王様とデー」

「断る」


 いー奴だけど、口が軽いのがなー。

 あ、オレはちゃんと、いー奴だって思ったからな!



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