週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
今一番欲しいもの─彰
朝陽さんがバイトに行っちゃって暇になった俺は、ソファに寝たまま、おとなしくケータイを弄ることにした。
ホントは一昨日辺りに、朝陽さんとこたつを買いにいくはずだったんだよね。
でも俺がこんなだから延期。
だからせめて、どんなこたつがいーか候補でも挙げとこーかと思って。
とりあえず机は、丸いのと正方形のと長方形のがあった。
丸い机、なんか可愛くていーかも。
角がなくて安全そーだし、朝陽さんにくっつきやすそーだし。
てか、この“マイクロファイバーこたつ掛け布団”って、なんか良さげ。
あったかくて洗えるらしーし、触って気持ちよかったら即決かなー……。
とかなんとか考えてたら、いきなりケータイが着信を告げた。
誰だかわかんねぇけど、反射的に通話ボタンを押してしまったからしかたなく耳にあてる。
「もしもし?」
『おう早いな。お兄様が恋しかったのか?』
大翔かよ……。
ま、予想はしてたけど。
「ねーよ変態」
『ひどいなぁ』
「で、何の用?」
『今から見舞いにでも行ってやろうかなーって思ってな』
「そっか助かる。ちょうど暇してんだ」
『朝陽は?』
「バイト」
『なるほど。なんか欲しいものあるか? 今一番欲しいもの、なんでも買ってやるぞ』
「こたつ」
『は?』
「こたつが欲しい」
『こたつって、暖房器具の?』
「他にこたつがあるか?」
『いや、食べ物とか飲み物を想定してたから……』
「わかってる。冗だ」
『俺が選んでいいなら買ってやる。じゃあまた後でな』
「え」
電話が切れた。
おい、冗談だよな……?
千円や二千円のものじゃないんだしな。
てか、ちゃんとプリンとかケーキとか言えばよかった。
俺が欲しいものは、朝陽さんが喜ぶものだから。
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