週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
何で謝るの?─彰
やべぇ、俺かっこ悪すぎる……。
朝陽さんを助けよーと走ったら、玄関の段差を見落として踏み外すとか。
あのシチュエーションで普通に考えて起こる、王道的展開ってさ……。
朝陽さんが椅子から落ちる。→痛みを覚悟して目を瞑る朝陽さん。→朝陽(あれ……痛くない?)→朝陽『彰!? まさかオレを庇って……!』→彰『あ……朝陽さんを……守れてよかった。ガクッ』→朝陽『あきらーッ!』
ってやつだよね!?
なのに俺ときたら……。
朝陽さんに怪我がないのは良かったけど、素直に喜べねぇ!
踞る俺を見て、慌てて椅子から降りてくる朝陽さん。
恥ずかしいから、俺を見ないでほしーな。
でもそんなわけにいかないか。
「彰、彰っ!」
「朝陽さん……ごめんね。俺……」
「大丈夫か?」
「……大丈夫じゃないかも」
精神的ダメージがヤバい。
あまりにも自分が情けなくて……。
「怪我したのか!?」
「あ、そーいえば足が痛いかも」
「見せてみろ!」
「いてっ、左足が痛ぇ、朝陽さん! 引っ張んないで!」
「捻ったのか!?」
「う……最悪だ」
一人で転んで情けない上に、捻挫みてぇなすぐ治らない怪我。
これじゃ、暫くバイトを休まないとならないから給料が減る……。
てか教習所も無理じゃん。
これで朝陽さんに呆れられたら、もー立ち直れないかも。
でも朝陽さんは呆れるどころか、何故か泣きそーな感じに顔を歪ませていく。
「オレのせいだな……」
「え」
「ごめんな。オレがバランス崩したから」
「ちょ、待ってよ」
「っ……彰。ごめん」
なんで?
なんで謝るの!?
てか、マジで泣いてる!?
俺は慌てて朝陽さんの手を取った。
「朝陽さん、落ち着いて。俺が一人で転んだんだよ」
「ちげーよ……。オレが危ねーから、助けてくれよーと、したんだろっ」
「まぁ、そーだけど……」
「ほらオレのせいだ!」
「いやだから、この怪我は俺が一人でドジったからで」
「こんな時にもオレを庇うなんて、彰はっ、優しーよな……っ」
ポロポロと零れ落ちる涙を止めてやりたくて、俺は足に当たらないよーに朝陽さんを引き寄せて抱き締めた。
マジでこーいう時、俺はどーしたらいーわけ!?
←Series Top
|