週刊『彰と朝陽』

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買い食いしつつの帰り道─朝陽



 スーパーを出てちょっと歩いたとこにあるたい焼き屋で、彰が小豆とカスタードの二つをオレに買ってくれた。

 オレがスカだったからって慰めてるつもりなら殴ってやろーかと思ったけど、どーも違うらしー。


「朝陽さんの手、それであったまるでしょ」

「ん。確かにな」

「ホントは手を繋ぎたいんだけど……」


 彰はそー言って、辺りを見回した。

 今んとこ誰もいねーけど、いつどこから人が来るかわからねーから、手を繋ぐのは無理だな。

 女同士なら仲良しに見られるだけで済んでも、オレたちは男同士だから。

 オレは小豆のたい焼きを出して、しっぽからかぶり付いた。

 しっぽなのに、あんこがギッシリ入ってて美味ぇ。


「家に帰ったらいっぱいくっつかせてやるから元気出せ」

「うん! てか、図書カードじゃなくてごめんね」

「……遊園地券もうれしーぞ」

「そっか、よかった!」

「どこででも使えるのか?」

「わかんない。帰ったら調べてみる」

「ま、とりあえずクリスマスシーズンは混みそーだから、行くなら年明けだな」

「そーだね。五千円分もあるからフリーパスが買えるよ」

「二人で行くのか? 魔王でも誘おーと思ったのに」

「当たり前でしょ、遊園地デートなんだよ!? 大翔みたいな粗大ゴミを連れてくなんて、金もらっても嫌だ!」

「でも、彰は高所恐怖症だろ。乗り物に乗れるのか?」

「うっ……!」

「ジェットコースターとか観覧車とか。オレ、一人で乗るのは嫌だぞ」

「大丈夫! 朝陽さんへの愛のパワーで乗れる!」

「無理すんなよ」

「してないよ! マジで大丈夫だから。ジェットコースターは特に、スピードがあるし高さを感じる暇がないから!」

「そか。ならいーけど」

「ただ、観覧車はキツいかもしれない……」

「観覧車はどっちでもいーかな。でも、ジェットコースターは乗りまくるぞ!」

「乗りまくる……」


 彰がちょっと青くなって俯いてしまった。

 軟弱な奴だな。

 しかたねーから休憩しながらにしてやるか。

 オレはあと一口分になったたい焼きを彰の口に押し込んで、カスタードの方を取り出した。

 遊園地なんて何年振りか忘れたけど、すげー楽しみだ!


 -END-



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