週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
手袋代わりに俺の手を─朝陽
彰の計算通り、レシートの合計金額が『4,057円』で、オレたちは一回ずつガラガラできるよーになった。
とりあえず持ってきた鞄に買ったもん詰めて、入り口近くの特設会場に移動。
抽選会場はちょっとした行列になってて、すげー興奮する!
オレはレシートを握り締めながら、前を窺うよーに背伸びした。
「朝陽さん、緊張してくるね」
「そーだな。気合いで当てるぞ」
「図書カードは三等で緑らしーよ。三等なら当たりやすそー」
「お前、三等を甘く見るんじゃねーぞ」
「う、うん」
「緑色の玉なんて見たことあるか?」
「ない……」
「だろ。どーせスカの赤か白しか見たことねーはずだ」
「……! すごい、朝陽さん。俺がくじ運悪いの知ってるんだ」
「オレだからな。それぐらい彰を見ただけでわかる」
「朝陽さんはかっこいーな」
これぐらいで褒め称えるとか、単純すぎるだろ。
ニコニコしながら見てくる彰の視線に赤面しそーになって、オレは軽く俯いた。
こないだの一件から、彰は前よりもオレを嬉しそーに見るよーになったんだ。
想われて嫌とか、好きな奴を相手に思うわけねーけど、恥ずかしーから困る。
わかってんのか?
さっきから彰の“好き好き光線”に気付いた女が見てんだぞ。
彰は女の趣味なんか興味ねーだろーけど、今って男同士でどーこーっての、流行ってんだぞ。
カップルじゃなくても、男が二人でいるだけで妄想されるらしーのに……。
「あ、彰」
「なーに? てか朝陽さん、寒くない?」
「ちょっとさみーな」
「やっぱり。こっちおいで」
「ん」
彰に腕を引っ張られて、オレはなんとなく彰の懐に収まった。
抱き締められてるわけじゃねーけど、入り口が頻繁に開くから、彰が風避けになってくれたみてーな感じ。
風も来なくなったし、彰の体温もじんわり伝わってきて、やたらあったけー。
「あー、手も冷たくなってる。手袋は?」
「忘れた……」
「じゃあ、俺の手であっためたげる」
レシートを持ってない方の手が、彰の両手に挟まれる。
「手袋みてーだ」
「うん。朝陽さん専用手袋だよ」
「うれしーな」
「俺も。些細なことで、すごい幸せだよ」
「ん……」
……じゃねーよ!
ここはスーパーだろーが!
「か、帰ってから言えっ!」
オレは顔が真っ赤になってくのを感じながら、彰の腹筋を殴ってやった。
レシートがぐちゃぐちゃになったけど、無視だ!
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