週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
新製品─彰
十二月に入ってから、近所のスーパーで『歳末感謝祭』なるものが始まった。
二千円ごとに一回福引きができて、特賞はなんと旅行券二万円分。
これは狙うべきだ、と、毎回利用することに決めた俺は、こうして今日も買い物にやって来た。
ちなみに、日曜だから朝陽さんも一緒だ。
俺の天使、朝陽さん。
……なんだか今日は、当たる気がする!
もし旅行券が当たったらちょっと現金をたして、朝陽さんといー感じの温泉に行きたいな……なんて。
温泉で色付く朝陽さんの肌を想像しながら頬を緩めてると、カートを押していた朝陽さんがお菓子コーナーで立ち止まった。
「彰!」
「なーに、朝陽さん」
「このチョコ、うまそーだな」
「冬季限定の新製品だね」
「ん。ここは新製品だらけだ」
「いくつか買ってこっか」
「いーのか!?」
「うん。三つくらいならいーよ」
「……明日は豪雪か!?」
「豪雪って……そんなに珍しーかな」
「三つだからな!」
「ザッと計算したら、チョコ三つくらい足せば二回できるんだよね」
「ガラガラ?」
「そーだよ。朝陽さんと俺で一回ずつ」
「オレ、図書カードがいーな」
「え」
「図書カード三千円分だぞ。すげー太っ腹だよな」
旅行券でしょ、普通。
なんで朝陽さんは図書カードなんか……。
「当たるといーな!」
朝陽さんは嬉しそーにニコニコしながら、新製品コーナーのお菓子を物色してる。
……待ってよ朝陽さん!
欲しいものが旅行券じゃない理由はなに?
もしかして、俺と旅行したくないからとか!?
ダメだ、そんなんだったら立ち直れない。
どーしよう……俺……。
「コレとコレと、あと一個……。ん。どーした?」
「朝陽さん……っ」
「スーパーで情けねー顔するんじゃねーよ」
「ごめん。でも、朝陽さんが旅行券欲しがらないから……」
「旅行券は旅行会社でしか使えねーから、いらねー」
「?」
「旅館は現地に行って直感で決めてーんだ。写真見て先に決めんのは楽しみがねーだろ。部屋も風呂も料理もわかんねーのがいー」
「あ……」
俺、誤解してた。
朝陽さんには朝陽さん流の旅行の楽しみ方があったんだ。
「よし、あと一個はコレだ! 全部うまそーだな!」
「ホントだ。朝陽さんが選んだんだから間違いないね」
「当たり前だ」
朝陽さん大好き。
俺、朝陽さんのために図書カード当てるからね。
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