週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
泣かない方法教えてあげる─朝陽
彰は昨日、オレと喧嘩したから拗ねてヤケ酒をした。
何も食わねーで、浴びるよーに片っ端から酒を呑んだらソッコーで眠くなって、次に気付いたら朝。
ダチと終電逃した女三人が、彰をダチの家に運んでくれた…………らしー。
彰が寝起きのオレをぎゅーぎゅー抱き締めながら、息継ぎをほとんどしねーで昨日のことを説明してきた。
すげー作り話くせー内容だけど、何故かすんなり信じられた。
たぶんオレが彰を信じてーって気持ちだからだ。
「てか……激しいのにすぐへばるって、なんだったんだ?」
「え?」
「女が電話で言ってた」
「なにそれ……」
「もしかして、酒の飲み方のことか」
女の話と彰の話を照らし合わせたら、被りそーな事象がそれしかねーんだよな。
どー考えてもセックスの話っぽいけど。
「……たぶん」
「たぶんってなんだ」
「俺……女に電話の内容は聞いてないと思う」
「思うってなんだ!」
「朝っていうか、起きてから今までのことはほとんど覚えてないんだ。いろいろ気付いてすぐに朝陽さんを探しに出たから」
「そか」
「マンションとか大学とか走り回った。ダチにも探せって頼んで……」
「二日酔いなのに必死だな」
「うん。俺、朝陽さんがいなくなったら生きていけないから」
「………………」
大袈裟な奴だな。
オレの方こそ、もし彰が帰ってこなかったらって考えてたのに。
「朝陽さん……?」
「っなん、だ」
「泣かないで。朝陽さん」
「うるっせー」
「うん、ごめんね。でも、もー泣かせたくない」
「じゃ、一つしかねーけど、オレが泣かない方法、教えてやる」
「なに? なんでもする」
「彰が……ずっとオレの傍にいるなら、もー泣かねー」
「……もちろん喜んで。ずっと、何十年でも傍にいるよ。てか朝陽さん、キスしていー?」
「……っ、んぅ」
彰がしてくれたキスは、なんだか久し振りな感じがした。
しかもタツヤにされた時と違って、すげー幸せで気持ちよくて。
彰が好きだから、こーなるんだ。
オレは、まるで初めてキスをした時みてーにドキドキしながら、彰の舌にぎこちなく応えた。
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