週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
あの人からのメール─彰
朝陽さんのケータイにいくら電話しても、電源が落ちてて繋がらない。
メールを腐るほど送ってしまったけど、もちろん返信はナシ。
マンションに帰ってもいなかったし、大学に来ても見付からなかった。
こーなったら形振り構ってられなくて、俺は信頼できるダチ数人に適当な理由を付けて『ついででいいからこの人を探してほしい』と朝陽さんの画像付きメールを出した。
朝陽さん、どこにいるの……。
無意識に来てしまってた想い出の場所で、俺はとりあえず疲れた身体を休めることにした。
「……はぁ」
芝生に寝転がってみても、気持ちが落ち着かないからか休まらない。
昨日の酒がまだ残ってるせいで、頭が痛くて気分が悪いし。
朝陽さんがいたら、それだけで元気になれるんだけどな。
でもダチからたまに入るメールは、全部『見付からないし、見掛けた人もいない』って内容ばっかり。
これだけ人がいんのに、一人も朝陽さんを見た奴がいないってのか!?
ふざけんなよ……!
自分でも大学内の聞き込みを始めよーと立ち上がったら、サクサクと芝生を踏む足音が聞こえてきた。
「あ、須磨、いた!」
「あぁ!?」
「ひぃっ……」
苗字呼びの時点で朝陽さんじゃねーってわかって、イライラしてつい凄んだら、スズキマサオミが小刻みに震えてた。
「なんだお前。俺は今忙しーんだけど」
「で、でも朝陽のことで……」
「……朝陽さんの!? 言え、吐け、早く!」
「っく、くるし……」
「死ぬ前に吐け!」
「あさ……ひ、が、タツヤ、と」
タツヤだと?
朝陽さんが……あの最低野郎といた?
ショックを受けて呆然としてたら、唐突にケータイが震えた。
掴んでたスズキマサオミの胸ぐらを放してケータイを開く。
地面からカエルが潰れたよーな音がしたけどシカトだ。
「なんだ橋田」
『彰、今転送したメール見た?』
「メール? 見てねーけど」
『いいから見ろ。今すぐだ!』
ブツッと電話が切れて、俺は意味がわかんねーままメールを開いた。
「……朝陽さん!」
その文面を見た瞬間、俺は走り出した。
橋田から来てた転送メールが、タツヤから“俺に宛てた”メールだったから。
しかも『朝陽を預かってる』って内容で。
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