週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
もしかしてもしかすると…─彰
人がまだ寝てんのに、複数の女の話し声がうるさく響く。
うるせぇな。
朝から近所迷惑だろ、考えろよ隣の奴。
だいたい、壁が薄すぎんだよな。
あー、早く朝陽さんと新居に引っ越したい。
……って、もー引っ越してんじゃん!
俺は勢いよく起き上がって、激しい頭痛に顔をしかめた。
「って……!」
なんだこれ、すげぇ頭が痛ぇし気分悪いんだけど。
「お、須磨も起きたな」
「うっ……なんだこれ……?」
「昨日ヤケ酒してたじゃねーか。朝陽さんと喧嘩したーって」
そうだ……思い出した!
昨日なんも食わねーで、手当たり次第に酒煽ったんだった。
「朝陽さんどこ!? っ……てぇ」
「無理すんなよ。二日酔いなんだろ?」
「橋田いたのか。てか、なんでここにいるんだ?」
「ひでぇ……さっきから話し掛けてたの俺なのに。てか、ここ俺ん家だし」
「え」
じゃあ朝陽さんは?
俺、もしかしなくても朝陽さんを放置して無断外泊した!?
どーしよ、朝陽さんに連絡もしないで一人にしちゃうなんて……!
「ケータイ、俺のケータイどこ……」
「あっ。彰クンのケータイなら、リナが持ってるよぉ」
「やだー! リナ、パクっちゃダメじゃんっ。あはは!」
「パクるならケー番だけにしときなよォ」
「……どーも。おい橋田、なんでここに女が三人もいるんだ」
「終電なくなったし、寝ちまった須磨を運ぶ人員がいるし?」
「他の奴がいるだろ! 井上とか高江とか……」
「高江は女と夜の街に消えた。井上は近くに婆ちゃん家があるからって帰った」
そうか……まぁどーでもいいけど。
俺はとにかく長期弁解を覚悟して、橋田の充電器をケータイにぶっ挿した。
さっそく朝陽さんに掛けようとして“不在着信”のマークに気付く。
まさか朝陽さんから電話……!?
慌てて確認すると、夜中の三時台に着信が二回。
一回目は不在で、二回目は……。
「おい橋田」
「なんだ? 出てくれないのか」
「お前、朝陽さんからの電話に出た?」
「出てねーよ?」
なんだそれ。
じゃあもしかして、あの女とか!?
「夜中に掛かってきた電話なら、リナが出ちゃった! でも男だったよぉ?」
最悪だ……。
俺、今日自殺するかも。
←Series Top
|