週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
まさか酔った勢いで…─朝陽
何回か寝返りを打って、オレは布団の中で目を開けた。
最初はバイトで疲れたから先に寝よーと思って、普通に布団に入った。
でも電話であんなことになったからか、彰がすげー気になって寝られねーんだ。
「おせーんだよ、バカ彰」
今何時だ?
軽くウトウトした時もあったから、もー夜中のはずだ。
案の定、ケータイを見たら夜中の三時。
いつもの飲み会なら、終電がなくなる前にお土産付きで帰ってくるのに……。
オレと喧嘩して気まずいから、ダチの家に泊まってんのかな。
それなら電話かメールで連絡すればいーのに。
マジでオレが一人になりたがってると思ってんのかよ。
バカだろあいつ!
オレは急にムカムカしてきて、怒りに任せてケータイを掴んだ。
真夜中だろーが叩き起こしてやる。
走って帰ってこさせてやる!
オレはそう意気込んで、着歴から彰に電話を掛けた。
「……出ねー」
怒りも意気込みも萎んでしまった。
もしかして怒ってるから無視してんのか?
いや、彰はそんなことしねー……はず。
ただ寝てるだけだ、きっと!
ちょっと怖いけど一旦切ってからまた掛けてみる。
そーしたら、コール二十回目でやっと出やがった。
『………………』
「っん? 彰、寝てんのか……?」
『……あれ? 誰ぇ?』
「!」
女だ。女の声。
なんで彰のケータイに女が出るんだ?
ドクドクと心臓が嫌な音を立ててるけど……無視だ!
「あ、彰はどこ……」
『彰クン? えぇっとぉ、リナの横にいるよぉ』
「横に!? てかそこどこだ」
『ベッドの上だよぉ! 寝てたんだから、当たり前でしょっ』
「マジで……」
『アンタは彰クンの友達? もぉ、彰クンって激しいのにすぐへばるよね。ペース考えろって感』
「……あ」
無意識に電話、切ってしまった。
だって明らかにあの話、ヤッた後だろ……。
合コンで酔って、その勢いでヤッたのか?
それならまだいー。
もしあの喧嘩で、オレのことが嫌いになって普通にヤッたんなら、もー終わりだ。
なんで素直に言わなかったんだろ。
ちゃんと嫌だって言った上で、でも抜けんのはダメだって言ってたら、今ごろ一緒に寝てたのに。
バカは彰じゃなくてオレだ……。
オレは彰の匂いがする枕に顔を押し付けて溢れてきた涙を吸い込ませながら、時間が戻せたらいーのになんて、らしくもねーことを考えた。
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