TRUST

しおりを挿む
ご主人様と俺(side 彰)

□レーズンは嫌いなんです


 自分で手当てしてみる。

 ホントは朝陽さんにやってもらいたかったな…。


「いてっ!」


 唇の端、切れてんのはわかってたけど沁みた、意外ってもんじゃないくらい沁みた。


「ん…あきら?」


 あ。起きちゃった。


「ごめん朝陽さん。うるさくした」

「あ、オレこそごめん。寝てた」

「しおらしい朝陽さんなんて朝陽さんじゃない」

「んだと、それってオレがいつも偉そうみたいじゃね」

「え、違うの」

「偉そうなんじゃねー」

「偉いんだ!」

「ってめ、オレのセリフ奪うんじゃねーよ!」

「あはは」


 やべ、やっぱ楽しい朝陽さん。

 朝陽さんは笑ってんのが一番だ。

 俺がずっと笑顔守れんならいいんだけどな。


「…貸せよそれ」

「ん、これ食べる?」

「食う。ちげーよ、やってやるっつの」


 先にお菓子渡したら開けて口にくわえた。

 違くないじゃん、食うんじゃん!

 でも両手は俺の手当てのために動いてる。


「んん、んっん、」

「何言いたいのかわかんねー」

「んー、んん!」


 口にくわえたお菓子を俺に突き出してくる。ああなるほど。

 お菓子持って噛み千切れるようにしてやる。


「んぐ、おっせー。察しろよ、察するスキルを身に付けろよ!」

「割とあると思うんだけど、真面目に」

「ねーよ!あるなら苦労しねーだろうよ!」

「えー…」

「おま、今バカにしただろ」

「朝陽さん苦労してるっけ、なんて思ってないよ」

「思ってんじゃねーか!」

「あー、ま、おひとつどぞ」


 お菓子口に入れてやったら、また噛み千切った。

 もぐもぐ動く唇がかわいー。

 今の朝陽さんいいな、いつもこんな朝陽さんだと安心すんのに。


「いて、痛い、朝陽さん痛い」

「男の子だろ。我慢しろ」

「うぅ…」

「そのお菓子やるから元気出せ」

「ごめん、俺レーズン無理」

「お前!好き嫌いあるくせにそんなにでっかくなんじゃねー」

「この瞬間、レーズンは成長に関係ないことが証明されました」

「くっそー、お前レーズン食えたら2メートル行ってたのに」

「NBA行けた?」

「うん確実」

「うわ、今から食ったらいけるかな」

「もう募集は締め切りました」

「ひでぇ」


 笑ってるうちに消毒終わってた。

 でっかいガーゼと絆創膏貼られた。


「朝陽さん、残り食って」

「ん」


 朝陽さんが食ったらなんか美味そうに見えるな。

 レーズンは食わないけど。



- 16/29 -

[≪prev | next≫]



 ←Series Top





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -