週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
引っ込みのつかない嘘─朝陽
「朝陽くん、お疲れー」
「お疲れ! 次がんばれよ」
「ありがと。ね、今度須磨くんのオゴリで駅前のケーキ屋行こ」
「いーなそれ! 彰に言っといてやる」
「任せたっ」
仲間と楽しそーな約束をして、オレは清々しー気分でバイト先を出た。
今日はやけにさみーから、早く彰に温めさせねーと。
てか暖房ってあったけーけどつまんねーよな。
今度こたつがほしーって言ってみるか。
そんなことを考えながら、オレはすっかり陽が落ちた街を歩きだす。
すると、いきなりオレの太股がブルブル震えだした。
彰からの電話だ。
「なんだ」
『朝陽さん、バイト終わった?』
「ん」
『お疲れ。でさ、今俺……実は居酒屋にいるんだよね』
あいつもダチとの付き合いがあるからな。
いつもはもっと早くに連絡入れてくるのに、今日はいきなりだ。
帰ったらいると思ってた彰がいねーのは寂しーけど、我慢するか。
「飲み会か、わかった」
『ううん……合コン、なんだけど』
久しぶりにドキッと心臓が跳ねた。
合コンってアレだよな、女と出会うやつ。
「そか」
『でも、今すぐ帰るからね。ダチに騙されただけだし。あっそーだ朝陽さん、もしよかったらこっちで飯でも……』
「帰ってこなくていーぞ」
『え』
「そこで抜けたらしらけるだろ。オレ、一人でご飯食うし、心配すんな」
『でも合コンだよ? 普通の飲み会じゃないんだよ。……朝陽さんは、嫌じゃないの?』
「別に嫌じゃねーよ。たまには一人で過ごしてーし、気にすんな」
ホントは嫌だから帰ってきてほしーけど、居酒屋まで来て抜けんのはマジでしらける。
オレのためにダチを蔑ろにすることはねーだろ。
一緒に暮らしてんだから、終われば帰ってくんだし。
『そーだよね、俺、いつもベタベタしすぎだよね』
「は? なに言ってんだお前」
『たまには俺がいない方がいーんでしょ』
なんだこいつ。
オレの気持ちも知らねーで、勝手に勘違いしてやがんのか!?
「あぁそーだ。たまには一人で風呂に入りてーしな!」
『……わかったよ。じゃあまたね』
「なっ……」
ムカッときて心にもねーことを言ったら、いきなり電話が切れた。
嘘だったのに、彰は本気にしたのか。
これは……オレが悪い、よな。
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