週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
甘いひととき─彰
「あっ……うぅ」
「朝陽さん、気持ちいい?」
「ん、きもちぃ……」
「どの辺がイイ?」
「そこ、そこもっと」
「ぐりぐりしてほしー?」
「いっぱいしてぇっ」
「喜んで……!」
「あああぁー」
弁当を食った後の寛ぎの時間。
朝陽さんの甘いようで甘くない声が響く。
でも空気は甘い。
だって恋人同士の素肌と素肌の触れ合いだよ?
誰が何と言おうと絶対、これはいちゃいちゃシーンだ!
「あーうぅー。イイ」
「そーだろーね。すげぇ凝ってるもん」
「湿布ほしーなー」
「湿布なら実家に腐るほどあるから貰って帰ろ」
「いーのかっ?」
「俺がガキの頃欲しいっつったらくれたし、たぶん」
「そかー。すげーな」
手のひらの付け根で、朝陽さんのふくらはぎをぐりぐりと揉みほぐす。
その度に漏れる呻き声は低く雄々しくて、まるで雄叫びのよう。
でもいーんだ。
朝陽さんが俺に身体を預けてくれていることには変わりないから。
それに今の俺は運転を代わってあげることができないから、せめて朝陽さんのケアに努めないと。
「あーきーらー」
「なーに、あ、さ、ひ、さん」
「疲れただろ? もーやめていーぞ」
「大丈夫?」
「ん。サンキュ、すげー楽になった」
「それはよかった」
最高の笑顔に安堵の溜め息を漏らすと、うつ伏せから仰向けに体勢を変えた朝陽さんに腕を引っ張られた。
「彰も転がれよ」
「? なんで?」
「こーやって見たら、すげーキレーなんだ」
「あ……ホントだ!」
色付いた葉っぱが一面に広がってる。
隙間から見える青空も爽やかで綺麗。
俺はすぐに朝陽さんの隣に寝転がって、その光景を見つめた。
無言の中に漂う空気は穏やかで、紅葉を視界いっぱいに捉えたら、この世界に俺たちしかいないような錯覚に陥る。
ふと、二人の身体の間で手の甲同士が触れ合う。
どちらからともなく指を絡ませ合うと、自然と手のひらが合わさった。
「また来よーな」
隣から漏れた呟きに頷いた俺は、この温かい手をいつまでも握っていたいと願った。
-END-
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