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ご主人様と俺(side 彰)

□眠り姫の扱い


 マジで寝ちゃったよ朝陽さん。

 俺の背中で眠る朝陽さんは、ギリギリ荷物を死守してる。

 落とさないでよ、俺両手塞がってるし地味に結構ダメージ受けたから拾えないよ。


「んん…あき、ら」

「なーに、朝陽さん」


 寝言に返事しちゃいけないらしい。

 でも続かない。なんか続いて言ったら面白かったのに。

 ぼーっと歩いてたらアパート到着。


「朝陽さーん、起きないよねー」


 軽く揺さぶるも起きる気配なし。

 この体勢で朝陽さんの前ポケットに手入れんのは不可能だな、うん。

 とりあえず前屈みになって両手を自由にしたら、俺の胸元で揺れてるドラッグストアの袋を取り上げる。

 次はそのまましゃがんでー朝陽さんの尻を下ろしてー腕ほどかせてー。

 っと、やべ、朝陽さんの頭超グラついてる。

 どうしよ、へたに動いたら朝陽さんが壁に後頭部強打しそう。

 固まる俺。こんな不器用だっけ俺。

 とりあえずもっかい朝陽さんの尻を持ち上げる。

 あ、いいこと思い付いた。

 朝陽さんの尻を壁に押し付けて、前屈みキープで身体を支えつつ頭をガード。

 で、サッと俺が身体半回転させて向かい合う形。

 …よし!できた!

 さすが俺!朝陽さんへの愛に溢れた動き。


『あんたが朝陽に惚れたら譲ってやるよ』


 いきなりタツヤのセリフがリプレイした。

 あんまり冗談で好きとか言わないほうがいい?

 でも楽しいんだよな。朝陽さんに冗談で好きだーとか言うの。

 朝陽さんはどう思ってんだろ。タツヤがいるから意識はしてないっぽいけど。

 まいっか。いきなりやめる方が変だし。

 なんかホントに好きんなって言えなくなったみたいじゃん。

 てか、考え事してる場合じゃねぇ。


「朝陽さんしつれーい」


 一応断り入れて、朝陽さんのポケット漁る。

 これ、端から見たら朝陽さんと抱き合って股間まさぐってるように見えそうでヤバい。


「…んっ」


 うわあぁやめて、セクシーな声出すのやめて。

 ふぅ…疲れた。意味もなく汗かいてるし。

 ポケットから鍵出すのがこんなに疲れることだとは思わなかった。

 まだ外は明るいんだぜ、何してんだ俺。

 もう何度も通ったアパートの部屋に入る。

 ここで朝陽さんがタツヤと同棲してるのは知ってる。

 タツヤがずっと帰ってきてないのも知ってる。

 朝陽さんが毎晩寂しい思いしてるのも知ってる。

 めんどいからお姫様抱っこしてきた朝陽さんをソファに寝かせる。

 さすがに寝室に入る勇気はなかったから。



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