週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
立場逆転─彰
さっきの音がすげぇ怖かったんだけど、逆になんか吹っ切れた。
怖いもんは怖い。
相手も本気で脅かしに来てんだから、ビビって当然。
だから、ここは開き直って、思いっきりビビって楽しめばいーんだ。
幸い、朝陽さんが平気そーだから前にいてくれるし。
俺は手にかいた汗をミニタオルで拭って、改めて朝陽さんの服の裾を掴もうと手を伸ばした。
すると朝陽さんが溜め息を吐いて俺を振り返った。
「しかたねーな。今はこのままでいてやるけど、出口の手前で離せよ」
「え、なにを……?」
「とぼけんな。手だ」
「俺、朝陽さんと手繋いでないよ?」
「な……」
なに?
もしかして朝陽さん、俺以外と手を繋いでるわけ?
でも周りには誰もいな……。
「ぎゃーッ! 彰、彰ッ」
「朝陽さんっ! 落ち着いて!」
「これ、これなに!? やだ、彰ッ」
「俺が取ってあげるから!」
「早く……! うぅっ、やだぁ」
かわいー朝陽さん、こんなに震えて……。
誰だ、俺の朝陽さんを怖がらせた奴は。
この俺が八つ裂きにしてやる!
「………………」
ダチだ。俺のダチが暗幕の向こうから朝陽さんの手を握ってる。
チラッと覗いてた顔が見えてしまった。
しかもニヤニヤしてやがる……。
わざと朝陽さんを狙ったな。
「あ、彰ぁ……」
「朝陽さん、もう大丈夫だよ。俺が叩き落としてあげる、からっ!」
「ってぇ!」
「!?」
ダチの手首に思いっきりチョップしてやったら、素の悲鳴が上がった。
仮にもオバケ役が脅かし中に素になったらダメだろ。
でもそれでビクついた朝陽さんが抱き付いてきたからいいや。
てか可愛すぎる、朝陽さん。
さっきまで強気だったのに、すっかり立場が逆転してしまった。
ちなみに俺は、ダチの顔と素の反応を見てしまったせいか平気になってしまった。
「朝陽さん、ここからは俺が前を歩くから。手繋いでよっか?」
「ん……。離すなよ」
「何があっても守るよ」
やべ、俺今すげぇかっこいーな。
朝陽さんが惚れ直すのは間違いなしだ。
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