週刊『彰と朝陽』

しおりを挿む
立場逆転─彰



 さっきの音がすげぇ怖かったんだけど、逆になんか吹っ切れた。

 怖いもんは怖い。

 相手も本気で脅かしに来てんだから、ビビって当然。

 だから、ここは開き直って、思いっきりビビって楽しめばいーんだ。

 幸い、朝陽さんが平気そーだから前にいてくれるし。

 俺は手にかいた汗をミニタオルで拭って、改めて朝陽さんの服の裾を掴もうと手を伸ばした。

 すると朝陽さんが溜め息を吐いて俺を振り返った。


「しかたねーな。今はこのままでいてやるけど、出口の手前で離せよ」

「え、なにを……?」

「とぼけんな。手だ」

「俺、朝陽さんと手繋いでないよ?」

「な……」


 なに?

 もしかして朝陽さん、俺以外と手を繋いでるわけ?

 でも周りには誰もいな……。


「ぎゃーッ! 彰、彰ッ」

「朝陽さんっ! 落ち着いて!」

「これ、これなに!? やだ、彰ッ」

「俺が取ってあげるから!」

「早く……! うぅっ、やだぁ」


 かわいー朝陽さん、こんなに震えて……。

 誰だ、俺の朝陽さんを怖がらせた奴は。

 この俺が八つ裂きにしてやる!


「………………」


 ダチだ。俺のダチが暗幕の向こうから朝陽さんの手を握ってる。

 チラッと覗いてた顔が見えてしまった。

 しかもニヤニヤしてやがる……。

 わざと朝陽さんを狙ったな。


「あ、彰ぁ……」

「朝陽さん、もう大丈夫だよ。俺が叩き落としてあげる、からっ!」

「ってぇ!」

「!?」


 ダチの手首に思いっきりチョップしてやったら、素の悲鳴が上がった。

 仮にもオバケ役が脅かし中に素になったらダメだろ。

 でもそれでビクついた朝陽さんが抱き付いてきたからいいや。

 てか可愛すぎる、朝陽さん。

 さっきまで強気だったのに、すっかり立場が逆転してしまった。

 ちなみに俺は、ダチの顔と素の反応を見てしまったせいか平気になってしまった。


「朝陽さん、ここからは俺が前を歩くから。手繋いでよっか?」

「ん……。離すなよ」

「何があっても守るよ」


 やべ、俺今すげぇかっこいーな。

 朝陽さんが惚れ直すのは間違いなしだ。



- 153/320 -

[≪prev | next≫]



 ←Series Top





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -