週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
怖いよ─朝陽
オレも彰もサークルに入ってねーから縁がないけど、今日は大学祭だ。
高校みてーに強制参加じゃねーから、ダチからのメール見るまでコロッと忘れてたんだけどな。
オレはそのメールを見て、彰を引き連れてダチのサークルがやってる模擬店に行ってきた。
イケメンがいねーから女が来なくて、困り果ててたらしー。
というわけで彰を店先に配置して30分。
女の客を釣り上げまくって任務を終えたオレたちは、報酬のクレープをゲットした。
「このクレープ、なかなか美味ぇな」
「うん。学祭の食いもんなんて大したことないと思ってた」
「タダだしサイコーだな」
「でも客引きさせられたじゃん」
「彰は女寄せにいーんだ」
「朝陽さんは俺に女が寄ってきても嫉妬しないの?」
「しねー」
「……そっか」
「なんだ、嫉妬してほしーのか」
「そりゃあ、されないよりはされた方がうれしーよ」
「そんなもんか」
まぁたまに嫉妬するけど、それは内緒だ。
言ったら彰が調子に乗るからな。
オレはちっさくなったクレープを口の中に押し込んで、紙くずをゴミ箱に投げた。
「で、彰は行きたいとこ、ねーのか? ライブとかあんだっけ」
「ライブは人が多いからパス。てか一ヶ所、絶対遊びに来いとは言われてんだけど……」
「じゃあそこ行こーぜ。オレが付き合ってやる」
「うん……でも」
「オレがいねー方がいーのか?」
「違う! そんなわけないじゃん! ただ……」
「なんだハッキリ言えよ。男らしくねーな」
「朝陽さん、言っても笑わない?」
「ん」
「本格派お化け屋敷らしくて、気乗りしないんだよね」
「お前……まさか怖いのか」
「こ、怖いよ?」
「よし今からお化け屋敷に行くぞ!」
「え」
「早くしろ!」
「うそっ、朝陽さん!」
「うるせー、泣き言言うんじゃねーよ」
お化け屋敷で怯える情けねー彰を見て笑えるんだぞ。
これは行くしかねーだろ!
オレは「正直に言ったのに」とか呟いてる彰のケツを叩いて、そのお化け屋敷に向かわせた。
←Series Top
|