週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
よく似合ってる─朝陽
オレのこと見て、彰は呆れたりしねーのかな。
確かに黒のワンピースにとんがり帽子だったけど、ロングじゃねーし鷲鼻がなかったんだ。
つまり仮装っつーか、キモい女装だったんだ。
本格メイクっても、オレが思ってたシワシワの特殊メイクじゃなくて、普通に女の化粧されてカツラ付けられただけだし……。
オレは彰に背中を押されて廊下を歩きながら、すげー居たたまれねー気持ちで俯いた。
「どーしたの?」
「オレ、着替えてくる」
「ダメだよ。せっかくよく似合ってるんだから」
「そー言われるのが嫌なんだ! オレは男なのに」
「でも俺のために着てくれたんでしょ?」
「ん……」
「かわいーよ。魔女の朝陽さん」
リビングに入ったとこで、彰に後ろから抱きすくめられた。
その勢いで、とんがり帽子がゆっくり落ちていく。
ほっぺに掛かるカツラの髪がうぜー。
「あ、でも素顔がいーからカツラと化粧は取ろっか。やってあげるからソファに座って」
「彰っ……」
「なーに、朝陽さん」
「驚いた?」
「うん。すげぇ驚いた」
「そか」
「どっきり大成功だね」
「オレ、こんな魔女とは思わなかった」
「大翔に騙された? ほら、目閉じてて」
「ん」
騙されたっていうか、仕組まれたっていうか。
ちゃんと確認しなかったオレも悪いけど。
でも仮装で本格メイクって言われたら、特殊メイクだと思うだろ?
だからそれに合う演技もしてやろーと思って、いろいろ考えたんだ。
なのに、魔王の奴……!
オレは彰にメイク落としのシートで顔をゴシゴシやられながら、心の中でいっぱい言い訳した。
早く終わらせて、彰のご飯食いてーな。
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