週刊『彰と朝陽』

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手作りクッキー─彰



「これでよし」


 とりあえず飯はできたし、あとは朝陽さんを待つだけだ。

 ……とエプロンを外したら、ちょうどケータイに朝陽さんから電話が掛かってきた。


「朝陽さん! どーしたの?」

『あ、彰……。今、ドアの前にいるんだ』

「? 鍵は開いてるよ」

『ん。でも、出てきてほしーんだ』

「わかった。ちょっと待ってて」


 もしかして、俺が出てきた瞬間に「Trick or Treat!」かな?

 さっきプリンと一緒に作ったクッキーでも持って出迎えよう。

 朝陽さんからのイタズラも捨てがたいけど、今日は俺が朝陽さんにイタズラしたいなーなんて。


「おかえ……」


 ドアを開けた瞬間、俺は固まった。

 怪しいマント姿の大翔の背後に、何故かミニスカ魔女の朝陽さんがいるもんだから。

 てか、なにこの変態大翔。

 俺、こんなのと血が繋がってるわけ?

 朝陽さんは……すげぇかわいーけど。


「彰! Trick or Treat!」

「と、とりっくおあ、とりーと」

「朝陽、もっと元気良く言わないと。せーのっ、ト」

「手作りクッキーやるから大翔は帰れ」

「え」

「朝陽さんはこっちにおいで」


 大翔の台詞を遮った俺は、クッキーを押し付けて朝陽さんを救出した。

 腕を掴んで引き寄せると、前につんのめった朝陽さんが俺の前に姿を現す。

 とんがり帽子と黒髪セミロングのカツラ、それからミニスカワンピースにブーツ。

 靴下はレースでできてて、膝のちょっと上まで来てる。

 服も靴下もブーツも黒だから、太股の白が映えててヤバい。


「あっ、彰、これは魔王が……」

「うん。わかってる」

「オレっ……」


 朝陽さんは真っ赤になって、もじもじとスカートの裾を気にしてる。

 今すぐイタズラしちゃいたいほどかわいー!

 俺はとりあえず朝陽さんを背後に隠して、まず変態を追い返すことに決めた。


「大翔はなにが目的なわけ?」

「俺は差し入れ。と、朝陽の飾り付け?」

「……それには感謝する。けど、その格好はヤバいだろ」

「仮装パーティーに行くって言っただろ? ちなみにドラキュラ様なんだけど」

「まぁ女にはウケそーかな」

「だろ。じゃあ行くわ。それにメイク落としと朝陽の服も入ってるから」


 大翔は俺に紙袋を押し付けて、ひらひらと手を振りながら帰っていった。

 ……手作りクッキー、皿ごと全部あげちゃった。

 ま、あっさり帰ってくれたからいっか。



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