週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
魔王─朝陽
大学からの帰り、オレンジと黒で装飾された店の前を通ってたら、ポケットのケータイがいきなりブルった。
彰かもしれねーから一応画面を確認したら魔王だった。
……これは無視だな。
バイブは気持ち悪いけど、どうせロクな用じゃねーし。
てか、今日は彰がハロウィンパーティーするとか言って張り切ってたから、早く帰りてーんだ。
パーティーっつっても、ご馳走食うだけだけどな。
オレのためにかぼちゃプリン作ってくれるらしくて、楽しみなんだ。
「………………」
てかうぜーな。
いつまでも人の太股をブルブルさせやがって。
しかたねーから、ちょうど信号で引っ掛かって暇だし出てやった。
「なんだ」
『あ、やっと出たな』
「しつけーぞ」
『朝陽がすぐに出ないからだろ』
「魔王に話すことがねーんだ」
『俺にはあるんだって。で、今どこ?』
「大学んとこの駅。今から電車で帰る」
『じゃあそこで待ってろ。マンションまで送ってってやる』
「断る」
『変なことしないから!』
「今日は急いでんだ」
『彰とパーティーだろ?』
「……なんで知ってんだ」
『お前らを誘おうと思って彰に電話したら、朝陽と二人でパーティーするからって断られた』
「そか。じゃ、そーいうことで」
『待って、だから家まで送るって! 俺はお前らのパーティーに差し入れしようと思ってるんだぞ。肉だぞ』
「…………しかたねーな。乗ってやるから今すぐ来い」
『わかりました、お姫様』
なにが“お姫様”だ。相変わらずきめぇ魔王だな。
ちょうど青になったから電話を切りながら歩き出したら、向こうから見覚えのある派手な外車が走ってきた。
しかも、目を合わせたらロクなことにならなそーな奴が運転してやがる。
オレはちょっとだけ、肉に釣られたことを後悔した。
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