週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
可愛いワガママ─彰
朝陽さんは俺が思ったよりも、たくさん食べてくれた。
薬も飲ませたし、身体を拭いて着替えさせたし、あとは眠らせるだけ。
一日中付いていたいけど、バイト休むとか言ったら大袈裟だって怒られそー。
学校はダチに頼んどいたからいーとして。
でも、熱がある朝陽さんを一人にしておくなんて心配だ!
このまま行ったってどうせ仕事にならないだろーし、こっそり休もーかな。
でもその前に、早く氷枕してあげないと。
洗い物は後回しにして、俺はまず新しい氷枕を出して寝室に戻ることにした。
「あ」
ドアを開けると、赤い顔の朝陽さんと目が合った。
小さく声を上げて布団に潜っちゃったけど、寝てなかったから怒られるとか思ってんのかな?
なにそれ、超かわいーんだけど!
「朝陽さん」
「な……なんだ」
「氷枕するから、頭持ち上げるよ」
「……ん」
やっぱり頭が熱いな。
氷が溶けきる前に取り替え続けたいから、バイト休んでいー?
ってのはどーかな。
説得力に欠ける?
でもさ、看病したくて休みたいのに仮病はダメじゃん?
ヤバいな……。
バイト先はどうとでもなるけど、朝陽さんを納得させる理由が思い付かねぇ。
「できるだけいっぱい眠って」
「あ、あきら」
「なーに、朝陽さん」
「ここ、来て。オレの横……」
「布団の中?」
「ん。ね、寝るまででいーから」
「いーよ。朝陽さんが寝るの見届けたかったから」
これってもしかしなくても、添い寝しててってやつじゃね!?
再び込み上げてきた鼻血を堪えつつ熱くなってる布団の中に入ると、朝陽さんが抱き付いてきた。
「ずっといて、ほしーんだ」
「ん?」
「今日は学校もバイトも休んで。オレの傍にいて……」
「え」
なにこれ……。
夢オチとかじゃないよね?
「や、やっぱ我が儘すぎるよな。ごめ……」
「そんなことない! すげぇうれしーよ」
「ホントか……?」
「うん。ずっと抱き締めてるから眠って。起きても俺は傍にいるから安心して」
こんな可愛い我が儘、しかも願ったり叶ったりな内容、嬉しくないはずがない。
俺は朝陽さんが眠るまで、ホントにずっと抱き締めていた。
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