TRUST

しおりを挿む
大型犬とオレ(side 朝陽)

□修羅場


 目ぇ覚ましたら、硬い枕が不安定な枕に変わってた。


「あ、彰がいねぇ」


 彰のトートならオレの頭の下にいるけど、肝心な本体がいねぇ。


「こんなとこでやめてよっ」

「あ?」


 寝転がったオレの頭上で女の声がした。

 トートを首のとこにずらして、頭落として視線向けたら、逆さまの彰の後ろ姿。

 うぷ、これ頭に血が上ってヤバい。

 身体起こして振り返った。


「…タツヤ?」


 彰が対峙してんのはタツヤで、傍らに女。修羅場?


「タツヤさん頼む、別れてほしい」


 え、マジで修羅場? 女取り合っちゃってる的な?

 背中向けてる彰は気付いてないけど、こっち向いてるタツヤはオレに気付いた。


「無理。朝陽のこと好きだし」


 え、オレ…!?


「じゃあ!朝陽さん寂しがらせるのやめろよ!」


 彰が怒ってる? なんで?


「てかなんで口出すわけ? お前朝陽が好きなわけ」

「…それはない」


 ですよねーって、何がっかりしてんのオレ。


「でも、朝陽さんの寂しそうな顔、もう見たくない」

「あんたが朝陽に惚れたら譲ってやるよ」

「ちょ、待ってよ、何勝手に決めるわけ」

「…っ、朝陽さん!」


 彰がオレに駆け寄る。

 急に立ち上がってクラクラしたオレを支えてくれる。


「タツヤに何言ったよ」

「ごめん…」

「何言ったか訊いてる」

「朝陽さんと別れてほしいって」


 何勝手なことしちゃってんのこいつ。


「朝陽!朝陽は俺が好きなんだよな?」


 タツヤの言葉に、オレは頷く。


「だってさ。お詫びしてくれる?」

「…誰がするかよ、朝陽さんが貴方を好きでも関係ない。今すぐ別れろ」

「は? ふざけんじゃねぇっ…て!」


 タツヤが彰を殴った。

 彰はその瞬間にオレからうまい具合に離れたから、自分だけバランス崩した。



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