週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
こんな時しか素直になれない─朝陽
「あ、あきら……」
「なーに?」
「プリンも、食わせてほしー……な」
彰が食わせてくれたお粥が美味かったから、思い切ってプリンもって言ってみた。
今のオレは風邪引いてるし、熱があるし、別にいーだろ?
病人は甘えたっていーんだぞ。
「うん、いーよ。後でアイスも食わせてあげるからね」
「ん」
すげーうれしー。
風邪なんか引いて最悪だって思ってたけど、堂々と彰に甘えられるからいーかもな。
病気を理由にでもしねーとオレ、なかなか素直に甘えらんねーから。
「朝陽さん、あーん」
「あ……」
「噛まなくていーでしょ」
「すぐとろけた」
「うん。美味し?」
「ん。もっと食う」
「無理しないで好きなだけ食べて」
オレのために、選んで買ってきてくれたんだな。
お粥もそのまま飲み込めたから、オレが食いやすいように考えてくれたんだと思う。
ガキじゃねーんだから、ここまで甲斐甲斐しくしなくていーのに。
さっきも慌てて魔王に電話してたし。
彰は心配しすぎだ。
だからかオレ、すげー甘えたくなるんだ。
我が儘言ってしまいそーだ。
「もーいらない?」
「ん。ごちそーさま」
「ちゃんと食べられてよかった。じゃあ薬飲んで、着替えたら寝よっか」
彰が薬を口移ししよーとしたから、移るからダメだって言ってやった。
オレもキスしてーけど、彰に風邪が移るのは嫌だ。
看病なんてオレの柄じゃねーし。
……こんな辛いの、彰に移したくねーし。
「吐き気とかない?」
「大丈夫」
「そっか。じゃあ新しい氷枕持ってくるから、ちょっと待ってて」
「ん……」
もしオレが、学校とバイト休んでって言ったら、彰は傍にいてくれる?
オレは部屋を出てく彰を見送りながら、勇気を出すかどうか葛藤していた。
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