週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
甘えてんのかな?もしかして─彰
二人用の土鍋で、中華味のお粥が沸々と煮立っている。
朝陽さんが噛まなくても食べられるように、米は柔らかくしてみた。
あとは火から下ろして、溶き卵を回し入れて完成。
……ちょっとでも食べてくれるといーな。
「朝陽さん、起きてる?」
「ん……」
「身体起こすよ」
って上半身抱いたはいーけど、凭れられるものがねぇよ!
ヘッドボードは冷たくて硬いから却下。
どーしよ。リビングは寒いし……。
てか、朝陽さんがさっきより熱い。
早く食わせて薬飲ませないと。
「あき、ら」
「なーに、朝陽さん」
「ごめんな……」
「なに言ってんの? 謝んないで」
あーもういいや。俺が背凭れになろう。
俺はワゴンをギリギリまで寄せて、朝陽さんを背後から抱き締めるようにベッドの上で座った。
「朝陽さん、ちょっとでもいーから食べて」
「腹、減ってねー」
「薬飲まないといけないから。お願い、食べて」
「あ、彰が食わせてくれるなら……食べる」
「そんなことなら、喜んで」
最初からそのつもりだったし。
ワゴンにお椀を乗っけたままでよそって、れんげに一口分だけ掬う。
少し冷まして口元に運んだら、朝陽さんは素直に食べてくれた。
「美味し?」
「ん。美味ぇ」
「よかった」
ホントは熱で味なんかわかんないんだろーな。
なのに『美味い』なんて、切なすぎる。
苦しさを分けられるなら、すぐにでも引き受けるのに。
結局朝陽さんは、がんばっておかわりまでしてくれた。
おまけにプリンも食いたいって!
奮発していいプリン買ってきてよかった。
「あ、あきら……」
「なーに?」
「プリンも、食わせてほしー……な」
「うん、いーよ。後でアイスも食わせてあげるからね」
「ん」
小さく頷く朝陽さんが可愛すぎて、不謹慎だけどニヤけてくる。
てか朝陽さん、もしかして俺に甘えてる?
なんとなく左腕にしがみつかれてる気がするし……。
俺は込み上げる鼻血を必死で押し止めた。
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