週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
風邪っぴき─彰
『落ち着け彰。悪いけど今は行けないから、飯食わせて市販薬飲ませとけ。水分はスポーツドリンクで多めに、氷枕はこまめに取り替えろ。あと、汗をかいたらそのつど着替えさせること。今日の診察が終わったら様子を見に行ってやるから、それまでがんばれ』
慌てふためく俺を、真面目な医者の声が制する。
細かい指示と今夜来てくれるって台詞に、俺は安堵の溜め息を吐いた。
「う、うん。飯はなんでもいーかな」
『消化によくて朝陽の好きなもん、だな。その辺は彰のが詳しいだろ』
「そーだね。大翔……ありがと」
『お兄様のありがたみがわかったか? お礼は朝陽と一日デ』
「断る」
『チッ……。まぁ落ち着いたみたいでよかった。発熱自体は、身体が病気と戦ってる証拠だから悪いことじゃない。慌てずに看病してやれよ』
「わかった」
せっかく見直したのに朝陽さんとの一日デートを請求するなんて、やっぱ大翔は大翔だな。
わざと言って落ち着かせてくれたような気もするけど、本気とも取れる内容だから質が悪い。
っと、そんなことより朝陽さんだ!
俺は氷枕をタオルで包んで抱えると、寝室に走った。
「朝陽さんっ」
「彰、慌てすぎ……だぞ」
「だって朝陽さんが38度も!」
「うるせー……」
「あ、ごめん。とりあえず氷枕するよ」
「ん」
熱で真っ赤な顔をした朝陽さんが弱々しく笑う。
やべぇ、心配で胃に穴が開きそー。
「朝陽さん、食べたいものある? 今からコンビニで買ってくるから」
「ない」
「ダメだよ! なんでもいーから言って」
「……じゃ、アイスがいーな」
「わかった。朝陽さんの好きなプリンも買ってくるね」
「ん。うれしー……」
だから早く元気になって、朝陽さん。
ツンと鼻の奥が痛くなって、俺は慌てて袖口で涙を拭った。
早く、元気な朝陽さんに襲われたい。
ホントは襲いたいけど、朝陽さんが元気ならそれで満足。
氷枕が気持ちいーのか、目を閉じている朝陽さんの呼吸が穏やかになってきた。
俺は朝陽さんの柔らかいほっぺにキスをして、買うものを頭の中で反芻しながら家を出た。
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