週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
性別が逆だったら─彰
チヒロっていう名前のこの子は、どうやらスズキマサオミの幼馴染みで婚約者らしい。
で、朝陽さんがなんかの流れでスズキマサオミからのストーカー話を漏らして、問い詰められてた……と。
そこに俺が来て、勘違いしたってわけだ。
きちんと話して状況を理解したところでお互いに自己紹介と握手をして、今和解が成立した。
そこでふと朝陽さんが、俺の脇腹をさすりながら口を開いた。
「まぁ元はと言えば、チヒロがいるのにオレを諦めねーこいつが悪いんだよな」
「!?」
スズキマサオミがビクッと肩を震わせた。
責めるなら今だな。
「そうだね、さすが朝陽さんだ。 おいスズキマサオミ、こんな美人な婚約者がいんのに俺の朝陽さんに付きまとうとはどういう了見だ」
「ひぃっ……」
「まあまあ。そのことについては、私がマサオミをシメるよ。今後一切朝陽には付きまとわせないから、安心してくれ」
「チ、チヒロっ」
「ん。それがいーな」
真っ青になってるスズキマサオミを尻目に、チヒロによる刑の執行が確定した。
よし、狙い通りだ。
これで俺たちの毎日が平和になる……!
◆ ◆ ◆
女ではチヒロが一番好きだ、なんてふざけた言い訳をほざいたスズキマサオミは、チヒロに引きずられるようにして帰った。
あいつにチヒロはもったいないな。
とにかく、スズキマサオミは朝陽さんに手を出す屑だから。
「チヒロ、いー奴だろ」
大学から駅までの道を二人で歩いてたら、朝陽さんがぽつりと呟いた。
「そーだね、俺らの関係を普通に受け入れてくれたし。それに女臭くなくて話しやすい。てか男っぽい」
「実はオレも最初は男だと思った」
「やっぱり?」
「ん」
「見た目も中身も小型犬よりよっぽど男らしーし、しかたないよ」
「あいつら性別逆転したら、いーカップルになるんじゃね?」
「ダメだよ朝陽さん! カップルで見たらいいけど、チヒロが男なのはダメだ!」
「……?」
チヒロの性別が逆だったら、絶対に朝陽さんを盗られてた!
チヒロ自身にその気がなくてもだ!
やっべ、俺マジで自分磨きしまくらないと……。
とりあえず明日から筋トレメニュー増やすか。
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