週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
凛々しい美青年─朝陽
「カヤマチヒロです。よろしく!」
「オレは山田朝陽。名前で呼んでくれね?」
「わかった。じゃあこっちも名前で呼んでよ」
小型犬と話してる途中で傍らにいるオレに気付いたチヒロは、笑顔で握手を求めてきた。
たぶんいー奴だ!
凛々しい美人で中性的だけど、やけに男らしー空気を纏ってる。
美青年ってやつか?
すげーかっこいー。
ちなみに身長はオレと同じぐらい。
でも背筋がまっすぐ伸びてて、明らかに小型犬のが身長たけーのに存在感がある。
なんか舞台俳優っぽい奴だ。
オレはチヒロに隣を勧めて、彰が来るまで喋ってることにした。
こいつがいたら小型犬も変なこと言わねーだろーしな。
「てか、さっき迷子になるっつってたけど、チヒロはここの学生じゃねーのか?」
「うん。先週まで北海道にいたから」
「そーなのか! 引っ越してきたのか?」
「そうだよ。今、マサオミと一緒に住んでるんだ」
チヒロが照れ笑いでそう言うと、強引にオレの正面に座った小型犬が腕を振り回した。
「ちょっとチヒロ!!」
「なんだマサオミ。照れてるのか?」
「違うんだ! 朝陽、これは……!」
「違わないだろ。私たちは婚約関係だし」
「チヒロ!」
「え」
婚約関係?
男同士で婚約できるのか……?
てか、小型犬はチヒロがいるのにオレにストーカーしてたのか!
これはしっかり説教してやんねーと。
チヒロのために……そしてオレのためにも!
「お前、ちゃんとチヒロを大事にしろよ」
「いいぞ朝陽! もっと言ってやってくれ」
「朝陽っ。僕は朝陽のことが本当に……」
「うるせー! オレのこと追っ掛ける暇があるなら、チヒロとデートでもしやがれ!」
決まったな!
これで万事解決だ。
小型犬が反省してチヒロ一筋になれば、彰も安心するだろ。
でも、現実はそう上手くいかねーらしい。
「待って朝陽。オレのこと追っ掛ける、ってなに? マサオミは、女の私よりも男のお前が好きなのか?」
「チヒロ……?」
両肩を掴まれたと思ったら、チヒロの綺麗な顔がずいっと近付いてきた。
やべ、オレ余計なこと言ったか?
てかチヒロは女なのか!
髪型も体型も雰囲気も女っぽくねーから気付かなかった。
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