週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
泣き出す寸前─朝陽
夏休みが明けて約一週間、なんとなく学校に来ることにも慣れてきた。
休みが長すぎたんだよな……。
夏休み中、外では彰といるのが当たり前だったからなんか変な感じだ。
こーやって芝生に座って一人で風を感じて過ごすの。
なんか気持ちいーけど、彰がいねーからちょっと寂しい。
ま、本人には言わねーけどな!
「朝陽!」
「んっ」
いきなりどっかから呼ばれて、オレは辺りを見回した。
けど、誰もいねー。
うぜーな、冷やかしかよ。
「朝陽、朝陽っ」
「?」
「やっと会えた!」
「お前……」
目の前に来ねーとオレの眼中に入らなかったそいつは、なんと小型犬だった。
……てか名前はなんだっけ?
夏休みに入るまでは覚えてたはずなんだけどな。
まっ、いーか。
「朝陽、夏休みどうだった?」
「ん。彰と海行ったり買い物行ったり……あとは引っ越した」
「え!?」
「お前がストーカーすっからな」
「そ、そんな……知ってたの?」
「魔王がお前からメモリーカード取り上げたらしーぞ」
「魔王ってもしかして、あのチャラチャラした怖い人……?」
「怖くねーけど、見た目はチャラいな」
魔王が怖いとかねーな。
オレは一層震える小型犬を見て、とりあえず彰にメールした。
遭遇したら知らせてって言われてたのを思い出したからだ。
「とりあえず、もーオレに付きまとうなよ」
「それはっ」
小型犬が泣き出す寸前の顔でオレの腕を掴む……前に、その手を横から誰かが掴んだ。
「マサオミ! 急にいなくなるなんて、ひどいじゃないか」
「うわっ、チヒロ!」
「お前がいないと迷子になるだろ?」
「ごめん……」
「ま、いいよ。こうして見付けたわけだし。って、なに泣いているんだ?」
「これは違うんだ! ちょっと目にゴミが入って」
「そっか。マサオミは目がでっかいからな」
オレはそんな二人のやり取りをぼんやりと見てた。
なんていうか、びっくりしてたんだ。
なにしろ、小型犬がチヒロって奴には震えねーんだぞ!
こいつ、なにもんだ?
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