TRUST ■しおりを挿む
大型犬とオレ(side 朝陽)
□勇者一行、撃沈
「学歴の卒業年の欄とかスラスラ書いてたね、朝陽さん。 勇者様は記憶力がいいんだなー」
「おうよ、勇者はかっけーだろ遊び人」
「え、俺遊び人なの…? 戦士がいいな」
「お前レベル20までがんばったら賢者なれんだから耐えろ」
「朝陽さんのためなら喜んで」
魔王城は意外に大学から近かった。
綺麗な施設だし、マンガ読み放題でお菓子食い放題らしい。
「なにこの天国」
「朝陽さん、騙されたらダメだ、これは勇者を腑抜けにする罠だよ。まずは戦闘だ」
「よし、いっちょ勇者の力見せてくるわ」
◆ ◆ ◆
「朝陽さん、献血禁止ね」
終わってから宴中は結構余裕だったのに、施設出て太陽浴びたらフラフラしてきた。
「ん、すまねぇ。魔王に食らった毒が」
「俺は構わないよ。証明写真はまた明日ね」
「そうだな、この顔色じゃ落とされるわ」
彰の腕を離れて一人立ちしようとしたら、またフラフラと身体が傾いた。
「っと、危ないから俺にしがみついてて」
「逞しい腕に抱かれて、オレ幸せ」
「じゃあおとなしく幸せ噛み締めてて」
「ん…」
マジでヤバめだからここは素直に従った。
よろよろと二人で大学敷地内を歩いて芝生の場所に来た。
腋に手差し込まれて、くすぐってぇけどがんばって耐えた。
芝生の上にゆっくり座らされて、ひとまず安心。
「とりあえず近かったから大学来たけど、落ち着いたら帰ろ。おんぶするし」
無理やり膝枕される。
「えぇーせっかく来たのに」
「そんなこと言うと、お姫様抱っこで運ぶよ」
「くっ…勇者様を脅すとは」
「今日は俺の言うこと聞いて」
「ん、おぶられてやる」
「光栄だなー」
硬い枕が笑った。
木漏れ日が気持ちぃ。ちょっと眠くなってきた。
「朝陽さん、眠いなら寝ていいよ」
「…ん」
目ぇ瞑ったら、待ってましたとばかりに睡魔が襲ってきた。
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