週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
笑い顔─彰
「んっ…ぅ、んん」
鼻血拭いて、また朝陽さんとキスしてたら大翔が乱入してきた。
「おい二人共、俺様特製の天ぷら蕎麦ができたぞ!」
「っ魔王!いーとこで邪魔すんなバカ!」
「キスは後でもできるだろ? 蕎麦は伸びたら終わりなんだぞ」
「…それもそーだな」
あっさりと俺の上から降りた朝陽さんは、大翔に付いてってしまった。
「彰!早く来いよ」
「はいはーい」
朝陽さん…ちょっとは恥じらってほしかったな。
俺を心配したって認めさせようとした時は、恥ずかしがってたくせに…。
◆ ◆ ◆
「朝陽、どう?」
「美味ぇ!」
「思わず惚れちゃうだろ」
「ん」
「朝陽さんっ!?」
「フハハハ、朝陽は俺がもらう!」
朝陽さんひどい!
さっきまで俺とラブラブだったのに。
てか大翔の笑い方が魔王すぎてうぜぇ。
蕎麦ぐらいでいい気になんじゃねぇよ!
俺は朝陽さんに、ケーキを作ってやれるようになる予定なんだからな!
「なんでオレが魔王にもらわれねーとなんねーんだ。オレが惚れたのはこの出汁だ」
「出汁…?」
やっぱり俺の朝陽さんだ。
超信じてた!
「だよね!この出汁美味いよね朝陽さん!」
「ん。魔王はこの出汁の作り方を彰に教えてから帰れよ」
「それは“あごだし”っての」
「なんだそれ」
「トビウオの出汁だよ、朝陽さん」
初めて飲んだけど聞いたことだけはあったから知ってる。
“あごだし”なら売ってるから楽勝だな。
これからは常備するようにしよう。
「彰は物知りだな!」
「食は朝陽さんの笑顔の元になることだから、よく研究するんだよね」
「見直した」
「マジで?」
「ん」
「“あごだし”持ってきた俺のことも見直してよー」
「そーだな」
まぁこの件については許してやるか。
朝陽さんの新たな笑顔の元を発見したんだからな。
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