週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
添い寝─彰
「朝陽さん、眠いなら食うのやめときなよ」
「眠く、ねー……し」
「うつらうつらしてるじゃん」
「あきら…」
「なーに、朝陽さん」
俺は朝陽さん特製ミネストローネを食べながら、いつも通り返事をした。
この具だくさんっぷりからして、絶対野菜も全部使ってる。
明日と明後日の飯はどうしよう。
まぁ明日は今日のが残るから、ちょっとアレンジすればいーけど…。
それにしてもやっぱ、朝陽さんの手料理は美味い。
肉も野菜もすっからかんだけど、美味い!
エプロン姿は極上だし、俺にスタミナ付けるためだって冷蔵庫の中身を全部使っちゃうのもいじらしい。
冷蔵庫の中身なんて、俺が稼いでればどーにかなるし。
よし、朝陽さんのために出来る男になってやる。
てか朝陽さんの話はどうなった?
「朝陽さん、どーし……」
気付けば朝陽さんは、スプーンを握りしめてミネストローネに突っ込んだまま、完全に眠っていた。
前髪がスープに浸かりそうになっているのに、まったく起きる気配はない。
俺は朝陽さんの手からスプーンを取って皿に置くと、起こさないようにその身体を抱き上げた。
「二十歳過ぎてんのに、飯食いながら寝るなんて。かわいーなぁもう」
まぁあれだけ野菜を刻んだら疲れるよね。
まだまだ料理に慣れ始めたとこってレベルなのに、俺のためにがんばってくれたんだ。
すげぇ愛しい新妻だ。
そりゃ世間の女もアオミドロに見えるわ。
「…んっ、彰…」
ベッドに下ろすと、朝陽さんが薄く目を開けて身動いだ。
「朝陽さん、寝てていーよ」
「ん…」
エプロンドレスのリボンをほどいてやりながら囁くと、朝陽さんは安心したように笑って再び目を閉じた。
俺は半開きの唇に軽くキスをして、後片付けのためにダイニングへ戻った。
早く朝陽さんに添い寝してあげたいし、この飯はまた明日二人で食おう。
幸いにも冷蔵庫はからっぽだから、ミネストローネを鍋ごと入れて、俺は洗い物を開始した。
-END-
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