週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
ただいまのチュウ─彰
ここに帰ってくるのもあと何度か。
そんな見慣れたドアの鍵を開けて中に入ると、何故か真っ暗だった。
「あれ…朝陽さん?」
今日はずっと家にいるって言ってたのに。
とりあえず先にプリンを冷蔵庫に、と足を進めると、コンロの上に謎の鍋があった。
ほんのりあったかいその蓋を開けてみる。
「ミネストローネ?」
食欲をそそるいい匂いが部屋に広がった。
もしかしてこれ、朝陽さんが作った!?
俺は興奮する気持ちを抑えて、プリンを仕舞うために冷蔵庫を開けた。
その中には謎のボウル。
ラップを剥がすと、そこには塩だれに浸された肉が入っている。
「朝陽さん…!」
ボウルとプリンを冷蔵庫に押し込んで、俺は朝陽さんを探すために立ち上がった。
でも探すまでもなく、リビングのソファで身体を丸めて眠る朝陽さんを発見。
小さな寝息を立てる朝陽さんの身体には、この前買ったエプロンドレスが…!
エプロンドレスの下はTシャツとハーフパンツだけど関係ない!
鼻血が出そうでやべぇ!
裾のドット柄フリルとか胸元のリボンとか、とにかくやべぇ。
「飯の用意してたら、疲れちゃった?」
柔らかいほっぺに掛かる髪を払ってあげたら、朝陽さんの睫毛が震えた。
「ん…」
「朝陽さん起きた?」
「彰」
「なーに?」
「おは」
「おはよ。てか、ただいま」
「…んぅ」
寝起きで、とろんとした朝陽さんにキス。
その鼻に抜けた声は、別に女みたいに高い声じゃないのに俺の鼓膜を甘く揺らして、下半身をダイレクトに刺激する。
「オレ、ご飯作ってて、」
「うん。超うれしー」
「あとは食う前にやるから休憩してたら、寝てたみてーだ」
「がんばってくれたんだね」
「ん」
「ミネストローネなんてすごいじゃん」
「オレは天才だからな」
「うん」
「あとこれ、サービスで着てやった」
朝陽さんは張り切ってソファから起き上がると、エプロンドレスの裾を伸ばした。
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