週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
おみやげ─彰
もう九月に入ったから、さすがに朝晩の寝苦しさはマシになった。
むしろ涼しい時が多い!
そこで昨日、俺は朝陽さんに家庭内別居の解消を持ちかけてみた。
かなりの日数我慢したんだよ。
同棲してるのに寂しい夜ってどんなだよ。
俺、朝陽さんがいないともうダメだ!
…という感じで気持ちを全部伝えた。
そしたらなんと、二つ返事でOKが!
思わず抱き締めたら、朝陽さんはテレビを見ながら、キラキラした目でこう言った。
「このプリン、美味そーだな」
◆ ◆ ◆
「そこの“産みたて卵と絞りたてミルクの窯出しプリン”を二つください」
「はい、窯出しプリンを二つですね」
「…………………」
このアオミドロめ…。
俺がわざわざフルで商品名を読み上げたのに縮めるなよ。
でも、これで朝陽さんが喜ぶと思うと許せる。
アオミドロは朝陽さんに感謝しろ。
「こちらの、期間限定和栗プリンもいかがでしょうか」
「え」
やたら甘ったるい声のアオミドロが他のプリンを出してきた。
「昨日から発売の商品で、一番のおすすめでございます」
「あっそう…」
値段を見たら300円。
たけーよ!
窯出しプリンでも250円で厳しいのに。
「一日当たりの販売個数も限定でして、昨日は二時間で完売となりました。よろしければお試しください」
二時間で完売する期間限定商品。
朝陽さん…喜ぶかな。
「……二つ、ください」
「ありがとうございます。合計1100円になります」
高い、高すぎる。
でも朝陽さんの極上の笑顔が見られそーだし、別にいいか…。
明日と明後日の飯を有り合わせの野菜とか肉で作れば、なんとか。
それになにより、今日から一緒のベッドに寝られる!
幸せすぎてこんな臨時出費、痛くも痒くもない!
俺は痛い痛いと悲鳴を上げる財布を無視して、五千円札を嫁に出した。
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