週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
こっちにおいでよ─朝陽
彰が隠し持ってたAVの裏ジャケに『ずっと、先生に甘えたかったんだ』って書いてあった。
まさか彰がカテキョに甘えるのに憧れてるとは思わなかった。
ま、あいつは末っ子だからな。
見た目に似合わねーけど、やっぱ甘えんぼなのかもしれねー。
ここは一つ、オレが甘えさせてやるか!
たまには彰のためにがんばるのも悪くねーだろ。
「朝陽さん、そろそろ切り上げよ」
「ん」
「ちょっとゴミ、片してくるね」
「わかった」
いるもんといらねーもんを仕分けて、いるもんを箱に詰める作業をしてたんだ。
そのいらねーもんが詰まった袋を持った彰が部屋を出てった。
それを見送ってから、オレは一人で思考を巡らせる。
さて、どう甘やかすか…だな。
普段オレがなんだかんだ甘えてるから、改めて考えたらわからねー。
とりあえず膝枕してやるか。
いつもオレがされる側だけど、彰の硬い枕も悪くねーからあいつは歓喜するはずだ。
なにしろオレの膝枕なんだからな。
「ただいまー朝陽さん」
「おかえり」
「あれ? アイス食わねーの?」
「あっ!食う!」
「忘れてた? かわいーな」
「う、うるせー」
彰の甘やかし方考えてたんだ。
……なんて、オレが言えるわけねーだろ。
「今日はなにがいー?」
「バニラバーがいーな」
「はい。あーん」
「あむ」
「美味し?」
「ん。美味ぇ」
「よかった」
なんかオレが甘やかされてるような気がするよな?
べ、別に俺から甘えてるわけじゃねーんだぞ。
彰が勝手にオレの世話を焼くだけだ。
「あふぃら」
「ん?」
「ここ」
「脚が痛い?」
「ちげーよっ」
「あぁほら、食ってから喋ろ? 垂れるよ」
「んっ…ごめ」
彰の親指に口元を拭われて、オレは慌ててバニラバーをくわえ直した。
なんか情けねーな…。
食うのも遅くて、とっくに食い終わった彰がオレを見てるし。
とにかく早く膝枕してやりてーから、オレはアイスを食うことに全力投球した。
「…食ったっ」
「ゴミ貸して」
「ん」
……おい!ん、じゃねーよ!
これも甘えてるうちに入るだろオレ!
「朝陽さん、夜飯はなにがいー?」
「彰、あのっ」
「なーに?」
「こっち来いよ!」
やっと言いたい台詞が言えた。
甘やかすのって意外に難しーんだな。
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