週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
とっておきの存在─彰
クッションからカーテン、ペアの食器に枕やベッドカバーまで買ったら、意外に金が掛かってしまった。
でも物件に金が掛かってないから、あんまり痛くない。
「結構疲れたな」
「うん。夜飯には早いから、どっかで休憩する?」
「そーだな。ご飯は帰りに途中下車してもいーな」
「ちょっと遠いからね。じゃ、俺に任せて」
「なにをだ?」
「休憩する店。朝陽さんを連れていきたい、とっておきがあるんだけど」
「自信満々だな」
「かなり!朝陽さん絶対に喜ぶし」
「楽しみだな」
俺は朝陽さんの手を引きたいところをグッと我慢して、少し前を歩いた。
キョロキョロしながら後ろを歩く朝陽さんがかわいー。
「朝陽さん」
「ん…着いたのか?」
「うん。見て、あの人のケーキ」
「すげー!でけーな!」
「並ぶけど、いー?」
「待ってる間に選ぶ!」
「あはは。かわいーな」
「彰は何にするか決めてんのか?」
「朝陽さんが二つ決めて、わけて食おーよ」
「わかった!オレが美味いやつ選んでやる」
目をキラキラさせた朝陽さんは、張り切ってケーキのメニューを捲りだした。
なんでこんなにかわいーわけ?
さりげなく朝陽さんの腰に腕を回してみても、ケーキの写真に夢中で気付きもしない。
マジでパティシエ目指したくなってくる。
今日は朝陽さんにデコレーションしよっかとか言ったりして!
ケーキから抉ったクリームじゃなくて、俺が泡立てた生クリームを朝陽さんのイチゴに塗って食べたい…。
って、生クリームぐらい今の俺でも泡立てられるな。
でも一パックは多いから…今度クリーム系の飯でも作るか。
余ったから泡立てて食おーよ、なんて誘えばイケるはず。
「「よし!」」
「ん? 被ったな」
「あっ…」
「どーした?」
「今度、グラタンとかドリアとかクリーム系の飯でも作ろうかと…」
「グラタンいいな。好きだ!」
「そっか。よかった」
「オレはケーキが決まったんだ」
「じゃあそれ食ったら展望台行こーね」
「ん。楽しみだな!」
なんとかごまかせた。
俺はグラタンのレシピを思い浮かべながら、甘さ控えめのでっかいケーキを食べた。
朝陽さんの美味しい時の笑顔が最高に可愛かった。
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