週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
高いところが好き─朝陽
今日は、こないだ約束した雑貨屋に行くってことになった。
そこはオレたちの家からちょっと遠い海辺にあるらしい。
海って聞いたら彰と遊びに行ったのを思い出す。
海辺は海辺でも、ここは砂浜のあるとこじゃねーんだけどな。
「朝陽さん、着いたよ」
「ん」
モノレールが静かに停まった。
カップルとか同性の団体とか親子連れに混じって、オレたちも降りて駅を出る。
新しいショッピングモールができたせいで、結構賑わってるみてーだ。
でもオレはそんなものよりも、向こうにあるでっかいタワーに目を奪われた。
「彰…」
「なーに、朝陽さん」
「あれはなんだ?」
「展望台だって」
「上に行けるのか!?」
「うん。すげぇいい眺めらしーよ」
「見てーな…」
「朝陽さんは高い場所平気?」
「ん。好きだ」
「そっか…」
「…今オレのことバカだと思っただろ」
「えっ!」
「ムカつく」
「思ってないよ!」
「ホントか?」
「うん!」
「じゃあなんで様子が変わったんだ」
「俺、高所恐怖症で…」
「そーなのか」
「でも、朝陽さんが行きたいならがんばる」
「それでこそ彰だ」
しかたねーな。
様子見て、怖がってたら手でも握っててやるか。
ちなみに、やめとくって選択肢は無しだ!
「今から行く?」
「帰る前がいーな」
「デートの締め括りだね」
「そーだ。失敗は許されねーぞ」
「俺、朝陽さんのために漢になるわ」
「惚れ直してもらえるかもしれねーな」
「うん。ビッグチャンス」
「よし、じゃあ先に雑貨屋に行くか!」
「いろいろ買おーね」
「選ぶのはオレに任せろ」
「朝陽さんはセンスがいいから頼もしいな」
「彰はいい嫁をもらったな」
「うん。超幸せ」
デレデレしやがって。
オレはショッピングモールに続く道を歩きながら、締まりのねー顔で笑う彰の硬い腹筋を殴ってやった。
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