週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
あれはいつ?─朝陽
次々に花火が打ち上がる。
それがすげー綺麗で、オレはたこ焼きのパックを持ったままで空を見上げてた。
「朝陽さん、危ないからゴムするよ」
「ん…」
手に持ってたパックが取り上げられても、オレは視線を逸らすことなく花火に夢中だった。
「すげぇキレーだね」
「でけー…」
「うん、すごい」
「彰」
「なーに?」
「初めて会ったの、いつだっけ」
「春だったね」
「ん」
「思い出しちゃった?」
「お前は最初から大型犬だったな」
「…そーだね」
「こーなるとは思わなかった」
「俺も。でも今は大好き」
「オレ、犬っぽい奴は嫌いなんだよな」
「ひでぇ!」
「でも…彰は別だ」
「朝陽さん…」
「彰だけ、特別だ」
オレはなんとなく、彰との距離を詰めてもたれてみた。
上向いてばっかだとちょっと首がいてーんだよな。
別に…しんみりしてくっつきてーとか、そんなんじゃねーからな。
「朝陽さん」
「なんだ」
「キスしていー?」
「ダメだ」
「ちょ、なんで!? 今めちゃくちゃ雰囲気いいじゃん!」
「外だし」
「みんな離れてるし上しか見てないし」
「…彰の顔で花火が見えなくなるだろ」
「もう…」
外でキスなんて、恥ずかしくないのかこいつ。
オレもしてーけど…そんな…誰かに見られたら。
「また来年連れてってくれるか?」
「いーよ。今年でも一回くらい行けるよ」
「マジか!?」
「規模に拘んなかったらあるから」
「ん。なんでもいー」
「じゃあ決まり!」
「…さっき、綿菓子売ってた」
「ガキが大量に群がってたね」
「…………………」
「欲しい?」
「…ん」
「買って帰ろっか」
「いーのか?」
「うん。……ねぇ朝陽さん、肩抱くだけならいー?」
「しょうがねーな、彰は」
「…!?」
飼い主にじゃれつく大型犬だと思えば、軽いキスぐらいならしてやってもいーかって気になったんだ。
花火はちょっと見逃すけど…また連れてってくれるし。
でも!一瞬だけだからな。
コンマ何秒の世界だからな。
「朝陽さん…!」
「こ、これぐらいで調子に乗るなよ!あとは帰ってからだ!」
「うん、すげぇうれしー」
オレは残りの花火を、彰に肩を抱かれながらいい雰囲気で見た。
魔王も今ごろ、いい感じで初デートしてんのかな。
後で特別にオレからメールして報告させるか。
-END-
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