週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
しょぼん─彰
昨日あれからすぐに電話を終わらせたのに、朝陽さんは夢の中に旅立った後だった。
俺のせいで寝不足になってしまったんだから、我慢して起こさずにベッドまで運んだ。
火の付いた身体を持て余しながら、迷いに迷って俺もベッドの隅で眠った。
これでも朝陽さんのことを考えて、手を繋いで寝たんだ。
だから今のこの状況は納得がいかない。
朝陽さんを抱き締めてしまったのは、俺の意識下じゃないんだから!
「無意識でもお前だろ!コントロールしろ」
「寝てる間は無理だって!」
「こんな歳で“あせも”ができるとか許せねーんだけど」
「…ごめんなさい」
「オレ、やっぱ彰と別々に寝たい」
「そんなぁ!」
「昨日は睡眠欲がきつかったから寝てたけど、サウナに閉じ込められる夢を見たんだぞ」
「俺のせいで?」
「そーだ」
「う…」
「オレもお前とくっついて寝てーけど、夏は無理だ」
「…わかった」
俺は朝陽さんの睡眠を奪うどころか、“あせも”の原因にまでなってしまった。
しょんぼりなんてもんじゃない。
朝陽さんを抱いて眠る、という生き甲斐を奪われたんだから。
朝陽さんが俺のことを大型犬って言うけど、耳と尻尾があったら垂れ下がってポロッと取れそう。
なんだよ夏!俺に恨みでもあるのかよ…。
「彰」
「なーに…」
「そんなヘコむなよ」
「だって、朝陽さんが」
「お前のために救済措置を考えてやったぞ」
「マジで?」
「セックスは朝だけにする」
「え」
「昼寝なら抱き締めて寝てもいーから。あ、ただし“あせも”が治ってからな」
「朝陽さん、朝とか昼は…」
「これから夏休みだろ」
「あっ」
「秋までそれで我慢しろ」
「朝陽さん好き!」
「ん。じゃあまずは薬買ってきて塗れよ」
「喜んで塗らせていただきます!」
朝陽さんの“あせも”を治して、早く昼寝したい!
俺は朝から、忠犬の如くドラッグストアに走った。
もちろん、クリームとベビーパウダーのセットで購入した。
余談だけど、塗ろうとして朝陽さんの裸を見たら、我慢できずに押し倒してしまって怒られた。
夏のバカ野郎。
-END-
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