天使か悪魔か ■しおりを挿む
「琳、わかっているよね?」
陽平が綺麗な笑顔で、ベッドの上で縮こまる全裸の俺に迫ってきた。
その右手には、手錠なんていう物騒なもんがある。
纏う空気が恐ろしくて、いつも天使に見える笑顔が悪魔の笑顔に見えてくる。
「ほら手を出して」
「う……せやけど、痛いんは嫌や……っ」
逆らうことなんか無理やから、俺は素直に両手を差し出しながら涙目で陽平に訴えた。
「大丈夫。琳が気持ちいいことしかしないから、安心してよ」
「……こ……怖い」
カチャッて音がして、何故か冷たくない金属の輪っかが両手に嵌まる。
「琳のためにチタンにしたんだよ。冷たくないでしょ」
「うん……」
その優しさは嬉しいけど、なんか複雑な気分や。
あ、なんで俺がこないなことになってるか気になるんか?
平たく言うたら、俺が陽平を怒らせたからや。
それはちょうど三日前のことやねんけど────。
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