閑話*ある晴れた平日 街中編 ■しおりを挿む
◇朝の仕事 Side陽平
秘書兼執事と言うと、なんだかかっこよく見られがちな俺の仕事。
でも今のところ、いわゆるアルのお世話係なんだよね。
今日も朝から、食事の支度ばっかりしていたし。
いつものお弁当とは別に、小さなサンドイッチの包みを添えて主をお見送り。
これから体育で持久走がある日は、軽食が必要らしい。
作るのは構わないんだけど、メニューを考える俺の身にもなってほしい。
今度正太郎が来たら、軽食のリクエストでも取ろうかな。
「行ってくる」
「はい、どうかお気を付けて」
今日は学校で席替えがあるらしく、いつになく気合いの入ったアルが出掛けていった。
まだアルは電車通学をしてくれるだけマシかな…。
送迎が必要となると、ちょっと大変だ。
一人になったら、キッチンの片付けと主要な部屋を軽く掃除する。
洗濯はすべて業者に任せてあるし、細部の掃除は半月に一度のハウスクリーニングで充分。
それが終わったら纏めた洗濯物をコンシェルジュに預けて、パソコンに向かう。
日曜日ならアルに付いて回るんだけど、俺の平日は肉体的には楽だ。
たまにアルから突発的な指示があって慌てるぐらい。
こないだ突然、チロルチョコを手に入る範囲で全種類手配しろ、と言われた時は耳を疑った。
ま、そんな仕事もあと一年ほどで終わり。
アルが高校を卒業したら、あちこち飛び回る日々になるだろう。
一通りの連絡業務と食材の手配を終えたら、簡単にお昼を済ませて出掛ける準備。
今日は書留が届く予定がないから、アルに頼まれている本を購入するついでに、俺も本を物色しようと思っているんだ。
寒い寒い晴天の午後、俺はきっちりマフラーも着けた重装備でマンションを出た。
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