閑話*ある晴れた平日 高校編

しおりを挿む



◇朝の日課 Sideアル


 私には登校したらまず、なにを差し置いてでもやるべきことがある。

 登校するには早い方に分類されるこの時間、周りを気にせず、とある生徒の靴箱を開けるのだ。

 今日は…二通か。

 薄いピンク色の封筒と、真っ白な封筒。

 表書きはいずれも『御厨くんへ』となっている。

 私はそれを、若干苛立つと同時に勝ち誇った気分で回収する。

 正太郎の靴箱に手紙が入るようになったのは文化祭の女装のせいだ。

 もちろん校内の男からの、私の正太郎に宛てたラブレターだ。

 最近では絶対人数こそ減ってはいるものの、未だにしつこく手紙を入れる輩がいる。

 毎朝入るわけではないが、私は毎日登校した時に必ずチェックして、回収・処分までを行っている。

 間違って正太郎の手に渡ってしまってはならないからな。

 正太郎は真面目で優しくて可愛らしいから、手紙を受け取れば律儀に呼び出しに応じるだろう。

 もしそこで正太郎が襲われでもしたら…!

 ダメだ!そんなこと、私が許さない!


「アル? おはよう」

「しょっ、正太郎!おはようございます!」


 考え事に没頭しすぎていたようだ。

 この私が、正太郎が来ていることに気付かないとは…。


「それ、どうしたの?」


 正太郎の大きな目が、私の手元の封筒を捉えている。


「こ、これは…」


 苦しい…宛名を見られなかったのは幸いだが、どうごまかそうか。


「これは?」

「…映画のチケットなんです!今度一緒に行きましょう」

「そうなんだ!楽しみだな」


 あぁ、可愛らしい…。

 たかが映画のチケットなどで、こんなに喜ぶなんて。

 正太郎のためならば、映画館を丸ごと買い取ってもいいのに。

 とにかく、正太郎が素直な子でよかった。

 だが反面、人間に騙されやすいということになるな。

 私が全身全霊を傾けて護らなければ。

 正太郎を教室へエスコートしながら、私は改めて正太郎を一生護り抜くことを神に誓った。




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