年末年始 Extra サプライズ ■しおりを挿む
「琳、ただいま」
「はぁ!?」
信じられへん光景や。
カーッと首から上、全体がいっぺんに熱くなった。
俺な…どんな顔で出迎えようとか、最初はどんな台詞がええかなとか、電車の中でいろいろ考えてたんや。
待ち合わせの場所確認したら、一回トイレ行って髪型もちゃんとやって、後はなんかぬくい飲み物でも買うといたろかなーとか。
待ってる間暇やったらあかんから、ちっちゃい参考書まで持ってきたんや。
せやのに…。
「びっくりした?」
待ち合わせ場所に来た俺を、えらい嬉しそうな顔した陽平が、逆に出迎えよったんや!
まさにこれが、サプライズってもんや。
「わざと時間遅く言うたな!アホやろ!」
「新年早々、アホだなんて失礼だね」
「せやかて俺なぁ…」
「わかってるよ。ありがとう」
ほんまにわかってるんか。
待ってる間のドキドキとか、歩いてくる陽平がかっこよくて俯いてしもたとか、そういう甘酸っぱいもんを味わいたかったのに。
不意打ちで会うてしもたんが恥ずかしかったから顔を背けたら、冷たい手で無理やり正面に向けられた。
「よぉへ…」
「ただいま」
「…おかえり」
「よし、じゃあ行こうか」
なにが、よし、やねん。
俺の緊張とか気遣いとか、全部無駄にしやがったくせに。
クッキーかて渡さなあかんねんけど、もうホテルに着いてからでもええか。
って、そのまま行かせたらあかんやん!
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