僕の所有者宣言 ■しおりを挿む
何故僕なのか、なんてこいつには愚問だ。
男なのにとか、そういった訴えは通じない。
だって実際何度か訊いたし。
訊くたびに王子様スマイルで同じこと言うし。
「正太郎が正太郎だからです。男だとか女だとかではなく、私は貴方が好きなのです」
ってさ、なんだよこのクサいセリフ。
こいつだから許されるようなセリフ。
僕が言ったら失笑を買うよ?
「すみません。これでも我慢しているのです。あまりにも私らしくなくて、自分でも戸惑っています…」
しおらしく謝ってきたアルを見ていたら、ある考えが浮上した。
こいつの言動には、どこか計算めいたものを感じる。
こうすれば僕が少しアルを意識してしまうことをわかっているみたいな。
もし、僕がアルの言動に“こういう反応”をすることを計算しているのなら、もしも僕が意表を突いてそれを受け入れたら…計算違いが起こったら、こいつはどんな表情、反応をするのだろう。
間違いが起こってキスしてしまうことになってもまぁいいか、なんて思ってしまうあたり、僕はすでにアルを好きになっているのかもしれない。
それなら、アルの計算通りに僕の気持ちが動いているということか。
でも決定打がない、アルを好きだと思える確証。
「変なことしようとしないでよ、僕は男なんだから」
考えを一旦打ち切っていつもの反応を返すと、アルは笑ってまた謝った。
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