僕の所有者宣言 ■しおりを挿む
◆ ◆ ◆
「正太郎?」
目の前の椅子が動いて、こちらに身体を向けて誰かが座った動作に我に返った。
長い脚を組んでも嫌味にならないのは、こいつの人柄のせいか外国人の身体だからという妙な納得のせいか。
僕は顔を少し上げて、その碧い瞳に視線を合わせた。
日本人の婆さんとアメリカ人の爺さんから生まれた父さんと、アメリカ人の婆さんとドイツ人の爺さんから生まれた母さんの間に生まれたらしいアルブレヒト・マイヤーというこの男は、とにかく完璧。
背が高くて、もちろん脚も長くて、超イケメンだし頭もいい。
少し漢字が苦手なだけで日本語を始め五ヶ国語はマスターしているらしい。
普段から敬語で、物腰は柔らかく超紳士的。
高級マンションで一人暮らしをしているという噂もあって、本当に王子様みたいだと校内にすぐさまファンクラブなるものができた。
じとり、と少しの嫉みを含んで見つめていると、アルブレヒト──アルの白い頬が僅かに赤く染まった。
「正太郎…」
熱っぽく名を呼ばれて、近付いてくる顔。
伏せた睫毛は思ったよりも長く、色は眉毛と同じダークブラウンだ。
いや、そうじゃなくて…。
「何してるんだよっ」
近付いてきた顔を思いっきり押し返す。何故か顔が熱い。
「私を見つめる正太郎があまりにも可愛らしいので、キスをしたくなりました」
「したくなりました、じゃないよ…」
にっこりと微笑んで悪怯れることなく答えるアルに脱力する。
近くにいた女子が、きゃあと声を上げた。
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