彼の恋人宣言 ■しおりを挿む
◆ ◆ ◆
アルは恋愛経験豊富なんだろうな、と思う。
「舌を出してください。目は閉じないで」
「んっ、うぅ…」
言われるままにすると、口付けることなく先端だけが絡まり合う舌が恥ずかしい音を立てる。
目は閉じていないから、僕はその動きをじっと見つめることになる。
視覚、聴覚、触覚で、アルは僕の中に熱を植え付ける。
だんだん唇と唇との距離が縮まって、アルの舌が僕の口内を犯しはじめる頃、もう僕はアルに背中と頭を支えてもらわないと後ろに倒れてしまうぐらいに脱力していた。
「っん…ん、はぁ、…ふ、ぅ」
解放されるのはいつも僕の呼吸が限界を迎える少し前。
鼻でがんばって呼吸しているのに僕ばっかりこんなことになるから、アルはずるいって言ってみた。
「私は毎朝ジョギングしているので、正太郎よりも肺活量が少し多いのかもしれませんね」
「僕も走ろ…んん、もう…」
キスで言葉を奪われた。
「ダメです、正太郎は今くらいがちょうどいいんですから。 私は負けず嫌いなので、きっとトレーニングを増やしたくなります。 そうしたら、正太郎にキスをする時間がなくなってしまいますよ」
それでもいいのですか? と掠れた声で囁かれると、どんな理屈だよ、と思いながらも冷めかけた熱がまた燻りだす。
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