彼の恋人宣言 ■しおりを挿む
ウケ狙いの女装客引きだと思っていたのが、とんだ誤算だ。
アルを釣るためとはいえ、立派な共学で女子を差し置いて、僕がこんなことをしていいのかな。
衣装係は、必死でアルのマントだという大きな布にミシン掛けしている。
僕の衣装は誰かのワンピースをリメイクしたらしく、もう完成していると言われた。
合わせてみてほしいと言われたので、そちらに行ってみる。
どうせこれからアルが恥ずかしい文句を言うんだ。離れたほうがいい。
「一つよろしいですか? 私はあの設定には納得いきません。だいたい正太郎と…」
始まった。僕はなるべくアルの話を聞かないように、衣装係が出してくれた衣装に神経を集中させた。
マキシワンピースってやつを加工したらしいそれは、可愛いけど思ったよりもシンプルで露出も少なくて安心できた。
あとはアルが用意してくれているらしい、プラチナブロンドのウィッグ待ちだと聞いた。
なんだよ、僕の本格女装計画に当たり前のようにアルも加担しているなんて。
勝手にウケ狙い担当だと思って開き直ってたのが恥ずかしくなった。
嫌だな、誰かに代わってほしい。
僕は人知れず大きな溜め息を吐いた。
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